サンマ不漁

巻頭随筆

八木田 和浩 全国さんま棒受網漁業協同組合 代表理事組合長
ライフ 社会 グルメ

「もはや天災だ」

 全国の漁業者さんからこんな嘆きの声が聞こえてくるほど、今年のサンマは不漁です。

 9月16日時点の全国の水揚げ量は2,700トン。これは昨年比15%で、大漁の年であれば1日で水揚げできる量です。「48年ぶりの大不漁」といわれた一昨年をはるかに下回るペースですから、前代未聞の事態に陥っています。

 近海ではサンマが獲れず漁場が遠くなる中で、9月17日には29トンの中型船が帰港中に転覆する大変痛ましい事故が発生してしまいました。

 私は全国のサンマ漁業者が加入する漁業協同組合の組合長を務めていますから、日々、「これじゃあ生活していけないよ」と悲鳴に似た声が届いてきます。私が経営する会社でも、8月は水揚げ金額よりも、船を動かす油代(燃料費)の方が高くついてしまいました。

 より深刻なのが小型船です。全国一の水揚げ量を誇る北海道の花咲港であっても、小型船は文字通り1匹も取れていません。サンマ漁業者は船を1隻しか持たない「一杯船主」が大半です。油代すら賄えない状況ですから、出漁を見送っている人も多い。ただ、漁に出なくても乗組員の人件費や船の維持費はかかる。この状況が続けば廃業せざるをえない漁業者さんも出てきます。

 この大不漁の背景にあるのが地球温暖化です。近年、温暖化の影響で海洋上にある動物プランクトンが減少しています。サンマは動物プランクトンを食べて成長しますから、結果として生息するサンマの数も減ってしまうのです。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2019年11月号

genre : ライフ 社会 グルメ