「皆さん、こんにち」
<皆さん、こんにち、范博文「ハンハクブン」と申します。生まれも育ちも中国内陸部にある江西省南昌市です。年齢は29歳、趣味はあらゆるジャンルの記事を読むこと、東洋経済、日刊スポーツ、ニューズウィーク、東京新聞など、毎日は名だたる雑誌や新聞を読み漁るのです。そして古銭、銅貨、銀貨などを集めること、一枚一枚を通して東亜細亜の歴史や貿易関係が見えて来ますからです。
こんな私なんですけれど、ある日、心機一転というか、日本に研修生を送り出すとある下請けか孫受けという仲介業者のところに訪ねて日本に行けば儲かる話を聞いて日本行きを決めました。後の祭りなんですけれど、まるでニンジンがぶら下げられた馬みたいになった気がします。「3年間、よく働いていれば30万元(注.約489万円)ぐらい貯められるよ、人生一発逆転だぞ」、「ほらあの、帰って来た研修生に聞いて、いくら稼いだの? 30万元或いはそれ以上でしょう。」と言われました。
ところが、日本行きの研修生になるには仲介業者に支払う仲介手数料が馬鹿にならないほど、必要です。私は決めた以上、支払いを決意、親の支援もあって一括払いをしました。金額はなんと46000元(注.約75万円)、私にとって間違いなく大金なんです。夢見るばかりにバカを見たといえるでしょう。>
実習生は出国前から手数料を取られる
いやはや見事な日本語だ。上記の文章に登場する「仲介業者」とは、中国国内でのブローカーのことである。彼らは技能実習生の送り出し機関の下請けとして存在し、実習生は出国前から手数料の名目で多額の搾取を受ける。近年の中国人は仲介手数料を自前でまかなえることが多いのだが、ベトナムなどより貧しい国では手数料を捻出するために桁外れの借金をするため、いっそう悲惨な状態で来日することとなる。
中国の場合、日本での3年間の技能実習を通じて400万〜600万円ほどを貯められるという甘言をエサに、ブローカーが出稼ぎ希望の労働者(=技能実習生)を集めている。これは実習生側に、高額な仲介手数料への不信感を感じさせないための方便だ。なお、日本側の受け入れ機関や企業はこれらの実態をほとんど把握していないか、黙認していることが多い。
ちなみに技能実習生は、中国国内では「研修生」と呼ばれている。これは平成22年の日本側の法改正前の名称(現在の技能実習1号に相当)だが、この呼称が定着しているようだ。