『まんぷく』におけるドラえもんとのび太の関係
でも、物語のふたりの関係性を『ドラえもん』の世界に置き換えてみると、キャラクター構成に頷ける点もあるのです。つまり『ドラえもん』のタイトルロールもメインキャラも当然ドラえもん。ですが、事件を起こすのも、トラブルを持ち込むのも、それらをひみつ道具を使って解決し、成長するのはすべてのび太。ドラえもんはいつも変わらずのび太に寄り添い、最適なひみつ道具を渡して彼の成長を見守る存在。
『まんぷく』におけるのび太こと萬平も、「まんぷくヌードル」ターンで以前とは違ういくつかの成長を見せました。
「まんぷくラーメン」開発時には「僕を研究に集中させてくれ!」と、家のことや子どものことを福子に丸投げし、自分がやろうとしていることこそが世の中のためになる!と、半径1mのすべてをおざなりにしていた萬平。が、時を経て「まんぷくヌードル」の製造・販売ターンに入ってからは「ありがとう、福子。お前のおかげだ!」と、つねに感謝をきちんと言葉と行動で伝え、さらに会社でも社員たちに頭を下げてお礼を言える社長に。
生前葬、お疲れ様でした!
— 【公式】連続テレビ小説「まんぷく」 (@asadora_bk_nhk) 2019年3月28日
そういえば、福ちゃんがお酒を飲んでいるシーンは珍しい、というか初めてですね。
二人で晩酌、いいですね!#まんぷく #朝ドラ #安藤サクラ #長谷川博己 pic.twitter.com/QZzVpGpxOb
かわって、ドラえもんこと福子は……困った時や悩んだ時に前髪を触るクセをやめたこと以外、なにも変わりませんでした。最後まで「わたし」が主語になることもなく。でも、それはそれでいいんです、だって彼女はドラえもんなのですから。ドラえもんが一番嬉しいのはのび太が苦難を乗り越え問題を解決し、笑顔でこう口にする時なんです「ありがとう、ドラえもん! ドラえもんのおかげだよ!」と。
朝ドラのセオリーを外れた、徹頭徹尾「夫婦の物語」
そんなドラえ……いえ、福子と萬平の40年以上に渡る半生を描いた『まんぷく』は、「女性のお仕事ドラマ」「家族のお話」という朝ドラのセオリーを華麗にスルーし、徹頭徹尾「夫婦の物語」として展開しました。ここまで互いのことを無条件に信じ、肯定し合ってきた夫婦は歴代朝ドラの中でも稀有だったと思います。本当、ケンカさえしなかったもんね、福ちゃんと萬平さんは。
と、毎朝エビだのスクランブルエッグだの謎肉だのの開発過程を見るうちに、やっぱり買ってしまった日清カップヌードルのデフォルト。これを食べつつ、最終回をもう1度リプレイしてみましょうか。「まんぷくヌードル」の命運をかけた歩行者天国での販売日、人ごみの中で風船を配っていたピンクのうさぎの着ぐるみが、ふたりに救われ、人生をやり直した加地谷さんだといいなあ、と願いながら。