なぜ最初から寝室を別々にしたのか
シロさんと賢二の寝室が別なことが、リアルだと感じたのには理由がある。それは2011年に結婚式をあげたゲイ夫夫(ふうふ)の友達が、新婚当初から寝室を別にしているのを話で聞いていたからだ。
当時の僕には、寝室を分けることの意味がよくわからなかった。仲が悪いとまでは思わないけれど、ラブラブではないのかもしれない……とまで思っていた。
そのゲイ夫夫(ふうふ)のお2人に、今回改めて、なぜ最初から寝室を別々にしたのかとインタビューしてみると、
「自分の部屋(空間)が欲しかった」「人が横にいると気になって眠れない」
とのことだった。
僕は夫との結婚式後から3LDKのマンションに共に住んでいるが、寝室は同じだった。それが当たり前だと思っていたのだ。
だがそれから3年が経過したいま、それが変化しつつある。
僕は寝室に残り、夫は違う部屋で寝るようになってきたのだ。
きっかけは犬を飼い始めたこと。夫は犬を溺愛している。
他にも部屋はあるのに、彼はリビングの犬のケージの前に、布団を敷いて寝るようになった。
寝室に残された僕の気持ちは、少し寂しいような、でも、以前よりぐっすり眠れているような、なんだか複雑な気持ちだ。
ゲイへのイメージを変えてくれるかも
子どもが生まれるなど生活環境の変化や、何かのきっかけで寝室を分けるふうふは少なくないが、僕の場合は最初から寝室が別であれば、こんな気持ちにはならなかったかもしれない。
そんな思いから、最初から寝室を分けていた友達のゲイ夫夫や、シロさんと賢二の選択は正しかったのではないかと思える。自分の空間や時間を大切にできるからこそ、パートナーを思いやることもできるのかもしれない。シロさんと賢二のほっこりするような、愛があふれるやり取りは、そこに秘訣がある気がする。
シロさんと賢二、2人の絶妙な愛情表現や、2人が見せてくれているリアルな生活ぶりは、世間が抱きがちなゲイへのイメージをガラッと素敵なものに変えてくれるのではないかと期待している。
冒頭で紹介した、「きのう何食べた?」のマンガを持って「LGBTについて考えてみません会」に参加してくださった方のように、シロさんと賢二が好きだから、同性愛カップルが抱える社会的な問題に関して、理解を深めようと思ってくれる人も増えるのではないだろうか。