歯を離すように心がけるだけでも違ってくる
本来離れているはずの上下の歯が、なぜ接してしまうのか。理由はいくつか考えられるが、最も多いのが精神的なストレスだ。
「パソコン作業の多いデスクワークの人に多いのはもちろんですが、主婦にもTCHの人は少なくない。特に子育て中のお母さんは、赤ちゃんを抱っこしている時などに無意識のうちに上下の歯が当たっていることが多い。これも一種のストレスと言えるでしょう。とはいえ、現代人が日常生活の中でストレスを感じることなく生活するのは中々難しい。ならば、せめて“上下の歯が接している”ということに気付く機会を増やしてもらい、その時だけでも歯を離すように心がけるだけでも違ってきます」
そう語る齋藤七海さんの実践する指導する指導法を教えてもらった。
「『歯、離してる?』『歯ッ!』などと書いた付箋やシールを、日常生活で目を向ける回数の多いところに貼っておくのです。そして、その紙を見たときや上下の歯が接していることに気付いた時に、一回だけ『歯ッ!』と声に出しながら脱力する――という決め事を徹底するのです。この時、つねに上下の歯を離しておこうと意識する必要はありません。意識しすぎると逆に緊張が高まって食いしばる方向に進んでしまいます。紙を見たら脱力する、という反射行動が身に付いて来ると、自然にTCHも解消されていきます」
齋藤七海さんによると、このトレーニングを真面目に2カ月続けると、完全とはいかないまでも「問題のないレベル」にまでTCHを改善することができるという。
「顎が鳴るくらい……」などと軽く考えないで、早めの対策を
「重度の顎関節症の人は、まずこのトレーニングを行ってTCHのレベルを下げてから、必要に応じた顎関節症の治療を始めるのが理想的な流れです。これをしないで歯を削ったりすると、それがストレスになってTCHが高まり、顎関節症も悪化することになる」
齋藤博さんによると、TCHについての知識のない歯科医師の元で闇雲に歯を削られたために顎関節症が悪化するケースは少なくないという。そのうちの何割かはドクターショッピングを重ね、いずれ難民化していくことになるのだ。
繰り返すが、顎関節症やTCHを放置すると、心身ともにかなり面倒な事態を引き起こす危険性がある。「顎が鳴るくらい……」などと軽く考えないで、早め早めの対策を講じるべきなのだ。
ということで、この記事はこれでおしまいです。
ところで、いまあなたの上下の歯はどうなっていますか?
まだ歯と歯があたっているようならTCHの危険性大です。もう一度この記事を最初から読み直すか、TCHに詳しい歯科医師に相談してみて下さい。