中学に入るか入らないかの頃――一九九〇年前後に、映画に本格的にハマりだした。
ハリウッドの娯楽大作もB級アクションもアカデミー賞候補作も、ヨーロッパの芸術映画も、封切り映画をかなり観るようになっていた。そして、日本映画も同様に。
当時の新作邦画への印象は概ね「タルい」だった。洋画を観て感じた新鮮な刺激に出会えることは、ほぼなかった。この連載を始めて七年以上になるが、おそらくこの時期の公開作品はおそろしく少ないのではないかと思う。
ただ、そうした中で「これは凄い」という映画に出会った。それが今回取り上げる『いつかギラギラする日』だ。
監督は深作欣二、キャストは萩原健一、木村一八、石橋蓮司、千葉真一、荻野目慶子、原田芳雄。なにかヤバいことになりそうだ――。映画好きになり立ての身でも、この座組のもつスリリングさは理解することができた。「頭蓋骨まで熱くなる」という冴えたコピーも含めて、明らかに他の日本映画と異なるものがあり、観る前から期待に胸が躍ったものだった。
物語の舞台は北海道。借金返済のため現金輸送車からの強盗を企む若者(木村)、それに雇われそして裏切られるベテランのギャングたち(萩原、石橋、千葉)、彼らを狙う殺し屋(原田)、そこに絡んでくるイカれた女(荻野目)らによる金の奪い合いが、豪快なアクションとともに展開される。
萩原、石橋、千葉がカメラに向かって銃をぶっ放す冒頭のタイトルバックからしてカッコよく、「こういう日本映画が観たかったんだよ!」と中学生のくせに興奮したのを今でも鮮明に覚えている。
とにかく、役者たちが躍動しまくっていた。タイトル通りのギラギラした若さを発し続ける木村の熱情と、それをクールに追いつめていく萩原の静かな狂気――という対極的な闘争。老いたアウトローの哀愁を演じてのけた石橋と、盟友・深作との仕事に少年のように目を輝かせる千葉という両名優の、短い出演時間ながらも残した鮮烈な芝居。いきなり現われて徹底的に怖さを見せつけてくる原田。そして、彼らが束になっても敵わないような強烈な存在として際立つ荻野目。深作らしい賑やかさで、ラストのお祭り騒ぎのようなカーアクションまで最高のテンションだった。
これを仕掛けたのが、松竹の奥山和由プロデューサー。沈滞した日本映画界と闘ってきた男だ。本作はじめ、あの頃に彼の手がけた作品は何かしてくれる気がしていた。
そんな奥山の映画人生を語り尽くした本が、十月十日に発売になる。頭蓋骨まで熱くなる一冊、お楽しみに!