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今のツッコミに求められる「面白さ」と「新しさ」

 この3組が争った最終決戦の審査結果は、ミルクボーイ6票、かまいたち1票、ぺこぱ0票。数字の上ではミルクボーイの圧勝となったが、実質的にはこの3組の間にそれほど大きい差があったわけではなかった。3組ともツッコミのあり方に特徴があり、それを軸にして観客を自分たちの思う通りに振り回すことに成功していた。

『M-1グランプリ』という大会では「面白さ」を前提に「新しさ」も評価の対象となる。ツッコミは観客の代弁者でなければならないのだが、そこにこだわりすぎて最初から最後まで常識の側に安住しているだけではやや物足りない。

©M-1グランプリ事務局

 いつの時代にも、ボケは非常識という素材を提供するだけ。それをどう料理するかというところにツッコミの力量が問われる。現代のツッコミは観客の側に寄り添いながらも、観客の予想を裏切り、期待を超えなくてはいけない。ミルクボーイ、かまいたち、ぺこぱはそれを見事に成し遂げていた。

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 特に、ぺこぱの「ボケを肯定するツッコミ」やミルクボーイの「ボケに対して物わかりが良すぎるツッコミ」は、否定と無理解が社会を分断しているこの時代に一服の清涼剤となる。令和初の『M-1』でそのような「優しいツッコミ」が評価されたのは、人々が優しさに飢えていたからではないか。