「忸怩たる思いなのは確かです」
――運が悪かったとしか……。
「我々の口からはそう言えませんが、忸怩たる思いなのは確かです。国際交流や、今盛んに言われているダイバーシティーを考えると、外国人留学生が学校や教室にいてくれて、一緒にボールを蹴るっていうのは素晴らしいことじゃないですか。ですが一方で、JFAもFIFAの加盟協会である以上、定められたルールをしっかり守る義務があるのです」
――では規則違反の指摘を受けた時点で、JFAとして日本特有の部活という制度の実態をFIFAに言葉を尽くして説明し、留学生がサッカー部でプレーするのはFIFA規則の適用から除外されるべき事例なのだ、と理解を求める努力はされたのでしょうか。
「もちろんです。私も含めたJFAスタッフがスイスのFIFA本部まで出向いて日本の部活の詳細を説明し、規則適用からの除外を訴えました。そしてFIFAの側も、日本特有の部活文化については一定の理解は示してくれました。しかし全世界の連盟を統括していく立場としては、それぞれの協会の個別事情に配慮した例外を認めるわけにはいかない、と」
そう語る須原理事の表情には、無念の色がにじんでいた。
「簡単な道のりでないことは確かですが……」
――この先、JFAの訴えが聞き入れられる見込みはまったくないのですか?
「簡単な道のりでないことは確かです。ですが日本の留学生選手の案件は、FIFAのハイレベルな意思決定機関でも、正式な議題とまではいかないんですが、議論はされています。そしてJFAとしても、我々事務レベルが正面からFIFAに訴え続けていくのはもちろん、田嶋幸三会長はFIFAのカウンシル(評議会)メンバーでもあるので、様々なパイプを持っています。そういったルートも活かしながら努力を続け、なんとか留学生のプレーが認められるように持っていきたいと考えています。あとは、どうやってFIFAの規定やその解釈に風穴を開けるかという作戦の部分ですね。その議論はJFA内で何度も行っています」
――ただ現時点では、2022年度から18歳以下の留学生選手は公式戦でプレーできない、と決定しているわけですね。
「残念ながらそうなります」
最後に、マルコス氏が取材時に聞かせてくれたこんな話を紹介しておきたい。