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柴咲 おっしゃる通り、とても難しいです。養老さんは今まで82年生きていらっしゃって、世界や社会のさまざまな問題や課題を見つめながらも、なぜこれだけ自然に対する思いを持ち続け、しかも現実に失望せずにこられたのでしょうか。私はこのわずかな年月でさえ、思い悩んでしまいがちで……。

養老 自然はやっぱり、奥が深い。これに尽きます。古いものと新しいものが常に出入りして、見ようによっては常に変わりつづけている。よく「生態系」といわれますが、実際の「生態系」を見た人は、誰ひとりいません。ある特定の地域にどれだけの生き物が住んでいるのか、その実態は調べようがないし、わかりようがない。日本という特定の地域に、細菌からウイルス、そして人間まで含めたどんな「生態系」があるのか、厳密なところは誰も知らないわけです。しかも、調べているうちに変わっていってしまう(笑)。だから、あまり悩んだり、がっかりと気を落としたりすることはないわけです。

養老孟司氏

「脳化社会」と猫の関係

 養老さんの答えを聞き、「グルグルと考えてしまうことは仕方がないんですね」と気持ちが楽になった柴咲さん。そして和やかに進む対談に、かわいらしい闖入者がやってきて……。

養老 (テーブルの下を見ながら)我が家の猫が、参加したがっていますね(笑)。

柴咲 猫がそこにいるんですか、会いたい! 私も20歳の頃から今までずっと猫と生活しているので、目がなくて……。

養老 カメラに映してみましょうか(と、愛猫の「まる」を画面に映す)。

柴咲 ミャ~ッて鳴いてますね、かわいい……! スコティッシュフォールドですね、何歳ですか?

 

養老 もう19歳くらいですね。

柴咲 私の父の家にも、19歳の猫が2匹いるんですけれど、それにしてもすごく元気ですね! ああ、かわいい……(しばし見つめる)。

養老 私は「脳化社会」といっているのですが、現代社会というのは基本的に意識でつくっている社会であり、そうすると体は置いていかれちゃう。AIだろうとグローバル化だろうと、同じです。へたをすると広がりすぎて、話が宙に浮く。そのときに、身体性がブレーキになる。食糧のことを考えるにしても、ひとりでそんなに食べられるわけじゃない。そこが考える足場になる。ですから、よくいわれる持続可能性というのも、雲を掴むような、意識のレベルの話ではない。本当は、身体性のレベルの話なんです。そういうことはね、猫を見ているとわかるんですよ(笑)。

柴咲 そうですね、だから猫と生活するんですよね(笑)。

出典:「文藝春秋」10月号

 柴咲さんが北海道で始めた新生活の話題や、コロナ禍で観察した「蝶」の魅力、それらが予感させる「大きな変化の前兆」について語った対談「『自然』と『無駄』のなかで生きる」の全文は、「文藝春秋」10月号に掲載されている。環境の変化に戸惑ったときや、考えすぎて煮詰まったとき、ぜひ読んでほしい。変化に対応するヒントが詰まった対談となっているはずだ。

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