「真田丸」がどれだけ歴史を丁寧に描いているかをアピール
大河ドラマは当然ながら歴史好きな方々が見ている。そのため作り手が歴史に対していかに真摯であるかに敏感だ。三谷大河は「新選組!」のとき、時代考証に疑問視する声が湧いた。実はとても調べていたようなのだが、史実と史実の間をあまりに豊かな想像力で繋ぐ三谷ならではの脚本によって、フィクション性が強く感じられたのだろう。「新選組!」時代はまだSNSが現在ほど当たり前でなかったため、情報も十分に行き渡らなかった。そこで「真田丸」では歴史考証担当の研究者がTwitterでドラマを補完するようなことを積極的につぶやき、「真田丸」がどれだけ歴史を丁寧に描いているかアピールにつとめ、隆盛期にあったSNSとドラマが連動され、人気を底上げした。
史実をどう料理するか……脚本家の筆が冴えた「麒麟がくる」
史実をどう料理するか、あるいは、新たな学説をどう取り入れるか、視聴者は楽しみに見ている。「麒麟がくる」は、織田信長を裏切った謀反人とされてきた明智光秀(長谷川博己)を主人公にして本能寺の変の新たな真実に迫る趣向。光秀にとって本能寺の変が最大の見せ場であり、それまでの活躍の記録は少ない。とりわけ青年期の記録がなく、自由に想像で描くスタイルは「真田丸」のパターンと近く、脚本家の池端俊策の筆が冴えた。
最初からずっとスーパーヒーロー的な人物よりも、信繁や光秀(十兵衛)のように晩年になってひと花咲かせる人物は、働く一般視聴者の共感を得やすい。歴史上の人物をいかに親しみをもたせるか、そこが大河ドラマには求められる。
夫婦の心の繋がりが女性層を掴んだ「篤姫」
「篤姫」の場合は女性視聴者の心を掴んだ。圧倒的な男性社会のなかで生きる女性の物語で、篤姫(宮﨑あおい)は薩摩の島津家から徳川家に嫁ぐ。夫・第13代将軍・徳川家定(堺雅人)は“うつけ”者で頼りない存在と思いきや、それは跡目争いに関する陰謀から身を守るための仮の姿。実は切れ者で篤姫にだけはその知性を見せる。この夫婦の心の繋がりのドラマが女性層を強烈に惹きつけた。