「小池さんのフリップ芸」
都民にはずっと「家から出るな」「不要不急の外出はするな」と厳命しています。しかし、意味もなく二階幹事長に会いに行き、自分の元インターンが立候補した千代田区長選には何度も応援に入りました。「5つの小」とフリップを掲げて、「特に高齢者の方は気を付けるように」と述べた日は、会見が終わるとその足で会食に向かい、彼女の後援会長を長年務めたオリックス元会長の宮内義彦氏らと5人で2時間ほど、食事を楽しみました。宮内氏は85歳です。あまりに言行不一致です。菅義偉総理が二階幹事長ら8名と12月14日に会食して「ステーキ会食」とメディアで強く批判されましたが、小池さんのこの会食を取り上げ批判した新聞、テレビは、ひとつもありませんでした。
彼女の関心は常に「幹」ではなく「枝」のほうに行きます。本当に大事な、深刻な問題には目を向けず、枝の先のことで奇をてらおうとするのです。彼女の人生を取材でたどってきた私には、コロナ対策でも、彼女の「らしさ」が遺憾なく発揮されていると感じられます。
そんな彼女が昨秋頃から、浮かない顔を見せることが増えました。ワイドショーなどで「小池さんのフリップ芸」などと批判されるようになったことが大きかったと私は見ています。何か新しいことを発表する時は、いつもテレビの司会者よろしく準備したフリップを掲げて会見していました。そのワンパターンな手口が読まれ、芸人さんたちにも揶揄されるようになってしまった。
シルクハットからハトを出して見せる手品師が、客から「ほら、ハトが出るぞ」と先に言われたらやる気をなくす。よほどしゃくに障ったのか、フリップをやめて液晶パネルを横に話すようになりましたが、それもまた、おかしなことです。
そうやって揶揄されてしまうのは、小池さんに期待されていることが枝葉のことでなく、コロナ専用病床や医療従事者の確保、公平な補償といった幹に相当する実のある「コロナ対策」であって、空疎な言葉遊びはもうやめて欲しい、と多くの人が思っているからです。
発想はすべて軽い
ところが小池さんは幹へと向かいません。お金も時間もあったのに何をやっていたのかと思います。昨年8月初めに都が運営する初のコロナ専門病院を府中に作ることを自ら発表したのに、人繰りが付かず10月オープン予定が12月半ばにずれこみ、しかも規模は当初予定の3分の1でのスタートとなってしまいました。病床ひっ迫のため都立広尾病院など3病院をコロナ専門にしたのは、第3波のピークも過ぎた1月15日のことです(1月7日に1日当たり最多の新規感染者2520人を記録していた)。