10月31日は、いよいよ衆議院議員総選挙の投票日だ。
政権交代を賭けた今回の選挙、候補者たちが選挙カーでガンガン名前を連呼し、街頭に立って叫ぶのかと思いきや、緊急事態宣言が解除されたばかりだからか、思ったほどその姿を見かけない。ところがネットを開いた途端、広告バナーには自由民主党の岸田文雄総裁の顔が! さらに翌日には立憲民主党のCMも飛びこんできた。
そこで各政党が最初に出したCMについて、日ごろ企業などにコミュニケーションに関するアドバイスしている立場から分析してみようと思う。
自民党は、単調で仕草に工夫がなくアピール不足
まず自民党、落ち着いたというか大人しい印象だ。岸田氏のネクタイの色に合わせたのか、背景は青のグラデーション。青は知的で冷静で合理的、信頼や誠実さをイメージさせる色だが、気持ちをクールダウンさせる色でもある。時期的にも少し寒い感じがするし、我が党に投票をと呼びかけるなら、明るい色がよかった気がする。
岸田氏の呼び掛けもアクセントや語気に強弱がなく単調。「命と暮らしを全力で守り」と語りかけながら、上げたのは右手だけ。開いたその手をアップにしたのはいいが、守るものが2つなら、両手を順に上げ、握りしめた方がメッセージ性はあるだろう。
「成長と分配の好循環で」と右手、左手と手のひらを開いたまま順に胸の高さまで上げたが、「豊かに生活できる新たな日常を」と言いながら両手はそのまま。“成長と循環”で、握りしめていた手をパッと開くような演出や、“豊かに生活できる”で両手をもっと広げて見せる工夫があればと思った。
「一人ひとりの声に寄り添い」と呼び掛けるが、横向きで目線は下。寄りそっている感はイマイチだ。「多様な意見を受け止める」では、身体の前で広げられた両手は脇が締まり、高さは腰の位置。多様な意見を受け止めてくれそうな懐の深さは感じられない。これがトランプ前大統領なら、抱えるように両手を上げ、大きく広げただろう。どの仕草も小さいため、訴えたい言葉をアピールできていないのだ。
「新しい時代を皆さんとともに。自民党」で口をぎゅっと結んだのはいいが、声の大きさがほとんど変化しないため言葉に強さがない。青の背景効果もあり、残念ながら政治や時代を積極的に活動的に、新しく動かしていくというインパクトに欠けてしまった気がする。