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「『創造的破壊』という概念と深い関わりを持っています。『創造的破壊』とは、自分が作り出したものを自分自身で破壊し、新しいものを創ることです。英国人と米国人はそれに長けているのです。しかし、それはフランス人、ドイツ人、日本人には難しい。ではなぜ、英米は『創造的破壊』が得意なのか。その深い理由は、英米の伝統的家族形態、すなわち『絶対核家族』にあります。絶対核家族においては、子供は大人になれば、親と同居せずに家を出て行かなければならない。しかも、別の場所で独立して、親とは別のことで生計を立てていかなければならない。これらのことが、英米の人々に『創造的破壊』を常に促していると考えられます」

「何も生産しない老人」が力を持つ国

 しかし現在、アングロサクソン社会でさえ、高齢化により「創造的破壊」にブレーキがかかっています。

エマニュエル・トッド著『老人支配国家 日本の危機』(文春新書、2021年)

 従来の政治哲学は「中位年齢が30歳程度の社会」を前提に議論してきましたが、もし「中位年齢が50歳の社会」となれば、そもそもの前提が異なってきます。

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 例えばフランスは、個人主義的で「普通選挙」が大きな役割を果たしている国です。しかしその「普通選挙」が事実上「老人支配」の道具と化しています。有権者の高齢化で「何も生産しない老人」が力をもち、「生産をする若者」が疎外されているのです。「普通選挙」を信奉する私でも「70歳にもなる私のような高齢者からは投票権を剥奪すべきではないか」と思うほどです。「労働する人々」「子供をつくる人々」こそ社会の中心にいるべきで、政治権力も彼らに戻すべきなのです。

 2022年4月に大統領選を控えるフランスは、マヒ状態に陥っています。右派候補者ばかりで、右派の支持率が合計で約8割を占めているのです。「無秩序」と「革命」の国であるフランスがこれほど右傾化しているのも「老人支配」の現れです。有権者が高齢化しているだけでなく、「老人的思考」が支配的になり、若者も「老人のように考える」ようになってしまったのです。かつての若者は退職後の生活やアパルトマンの購入について思い煩うことなどなかったのに、今はそうではありません。こうした若者の傾向は先進国共通の現象です。