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山下 誰もやったことがない分野だったので、最初にいろいろ勉強しました。臭いの研究をしている大学教授と議論もしましたし、実際に喫煙所を数百ヵ所調査にも行きました。どういう喫煙所がいいのか、アンケートを取ったり、神田の商店街などで聞き込みもしました。

 その結果として、まずは求められる「いいもの」を作って、その喫煙所で人がどう行動するかを見ないと何も分からないなと思ったんです。経済合理性をほとんど無視して始めたのが正直なところで、マネタイズの部分は後付けでした。

竹山 家賃と維持費を払って、利益も上がってるんですか。

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山下 たとえば先ほどの神田店、ここは有人型の店舗で、タバコや飲み物も売っています。タバコはよく売れますけど利益率は低く、一定と決まっていますし、飲み物の売り上げも高は知れています。何もなくても維持費がかかりますから、なかなか黒字にしづらいです。

「THE TOBACCO」神田店(コソド提供)。左側のスペースではタバコや飲み物も売られている
「THE TOBACCO」神田店(コソド提供)

 店舗によっては、家賃や人件費を含めた固定費で毎月何十万円もかかる、気合いを入れた設備にしたら工事だけで1000万円以上もかかったお店もあり、まあ……ほとんど利益は出ませんね(苦笑)。

「THE TOBACCO」浅草店(コソド提供)

 無人店舗でも、定期清掃などは弊社のスタッフの他、周りの飲食店さんや清掃業者さんと連携しながら回しているので、ギリギリ赤字にならないレベルです。喫煙所の設置という単体で見ると、お金につながることはほとんどないと思います。

「そうなると、商売として回っていかないじゃないですか」

竹山 そうなると、商売として回っていかないじゃないですか。

山下 いま有望なのは、喫煙所内のモニターを利用するデジタルサイネージ(電子広告)のネットワークです。昨年9月に、タクシー広告などを手がけている株式会社ニューステクノロジーと共同で、オフィスビルと連携した喫煙所サイネージメディア「THE SMOKING ROOM VISION BREAK」を立ち上げました。

 先ほどの神田店でも喫煙所のモニターを見ていただきましたが、現在、オフィスビルなどのさまざまな喫煙所にあんな感じのモニターを設置させてもらい、そこに出す広告を収益にしているんです。

 現状で、都内を中心に100台くらい。これを200、300と増やしていくつもりです。喫煙所に一日に何回、どのくらいの時間、どんな人たちが来ているのか。私たちはそういった人流のデータを持っていますから、それらのデータを生かしています。