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ロープを首にかける感覚が忘れられない、執行の日はまっすぐ家に帰れない…刑務官が明かす知られざる“死刑の裏側”

『刑務官が明かす死刑の秘密』#1

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 日本には、刑法で定められた刑罰として死刑が存在する。直近では2021年12月に3人の死刑囚の刑が執行されたのを覚えている人も多いだろう。しかし、死刑執行に立ち会う刑務官の仕事について想像したことがある人は、果たしてどれほどいるだろうか。

『刑務官が明かす死刑の秘密』(一之瀬はち 著、竹書房)は、実際に死刑に立ち会った経験のある刑務官“マトバさん”に取材した内容を、漫画家の一之瀬はちさんがまとめたノンフィクション漫画だ。「刑務官シリーズ」の5作目であり、各種メディアで話題を呼んでいる今作について、作者の一之瀬さんに話を伺った。

作中のマトバさん(左)と一之瀬さん(右) 『刑務官が明かす死刑の秘密』より

「もともと犯罪関連の話に興味があって、知り合いの刑務官の方に話を聞いていくうちに、外から見るだけではわからない事実があることに気づきました。話を聞く前は『ただ巡回しているだけの人』というイメージだったんですが、死刑に関わることもあるし、ほかにもいろいろな仕事をしていることを知ったんです。

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 そこで担当編集者の佐藤さんに声をかけてもらい『じゃあ刑務所の話を描きましょうか』ということになりました」(一之瀬さん)

想像を絶する、刑務官の苦悩…

 本書では、死刑執行に使われる設備や刑務所の内情のみならず、知られざる刑務官の苦悩にも焦点を当てている。

 第6話で語られる「同僚M」の話は衝撃的だ。死刑囚の首にロープをかける感覚と似ているために車のハンドルを握れなくなり、うつとパニック障害を併発してしまったという。

『刑務官が明かす死刑の秘密』より

「死刑はシステマチックに執行されるイメージがありますが、刑務官の方のお話を聞いていると、受ける側も執行する側もいろんな思いをもって臨んでいるんだなと。本で読むのとは違って、体温を感じます」(同前)

 一之瀬さんがマトバさんから聞いたエピソードの中で特に印象に残っているのも、刑務官のリアルな苦悩についての話だ。