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 こうした逆境を見た各社は、新製品の開発と販売に取り組んだ。ロッテ酒類は日本ビールをベンチマークして2015年に発売した「クラウド」の販売を強化した。ハイト眞露は「テラ」、OBビールも「ハンマック」を開発。各社、輸出も視野に反転攻勢の機会をうかがっているという。

諦めない韓国企業の「チャレンジ」合戦

 苦戦が続く業界のこうしためげぬ「チャレンジ」は、何もビール業界だけの話ではない。

 たとえば、今夏、現代自動車が日本で燃料電池乗用車の販売を開始した。現代自動車は2000年に日本法人を設立し、2001年から乗用車の販売を開始したものの売上不振によって2010年に日本の乗用車事業から撤退している。それから10年以上が経った今年7月、電気自動車のアイオニック5と燃料電池車のネッソの販売を開始したのだ。

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 こうした「チャレンジ」が実ったケースが、ネイバーだ。

 1998年にサムスンから独立したネイバーは、2000年に日本語サービスを始めたが、2005年に撤退を余儀なくされた。その後、2007年に再上陸して「ネイバーまとめ」を開始し、ライブドアを買収したが、決め手にかけていた。

 ネイバーに転機が訪れたのは2011年3月だ。東日本大震災の直後に東京に出張した李海珍会長は、被災者がSNSで家族や親戚と連絡を取ろうとする姿を目の当たりにした。そこで、韓国で普及していたカカオトークを参照して「ネイバーLINE」を開発した。

「LINE」は本社を東京に置き、李会長自ら東京に滞在して開発の陣頭指揮を取った。

 ネイバーが開発したLINEは韓国でも知られているが、使っているのは在韓日本人か日本と接点がある人くらいで、日常的に使っている韓国人はほとんどいない。韓国よりむしろ日本で成功した事例である。

なぜ韓国企業は日本市場を目指すのか

 なぜ、必ずしも成功するわけでもない日本市場に、韓国企業が何度もトライするのか。

 韓国企業が日本進出を目論む理由は主に3つある。

 1つ目は市場規模だ。韓国は人口5000万人で、日本は1億2000万人。韓国市場は飽和状態になりやすく、早い段階から海外に目を向けてきた。

 そもそも、韓国市場は多くの分野で大手1社か2社が独占しており新規参入は難しい。自動車は現代と起亜、家電はサムスンとLG、百貨店とスーパーは新世界とロッテがシェアを二分する。