肉食と病気の関係は簡単にはいえない
2015年10月、世界保健機関(WHO)の専門組織の一つである国際がん研究機関(IARC)は、ハム、ソーセージなどの加工肉について、「人に対して発がん性がある」、レッドミート(牛肉、豚肉、羊肉、馬肉などの赤肉)に関しては、「人に対しておそらく発がん性がある」と発表。大腸がんのリスクは、「毎日50グラムの加工肉を食べると18%、毎日100グラムの赤肉を食べると17%増える」と報告した。
IARCの報告について、津金さんは次のように分析した。
「これは肉をたくさん食べる欧米で行われた研究に基づく判断です。肉食と大腸がんとの関係性を調べた研究はたくさんあり、加工肉は大腸がんになりやすいというデータが一部の例外を除きそろっています。赤肉については完全に明確になったわけではないため、『おそらく』という言葉が付いた。赤肉は、タンパク質やビタミンB、鉄、亜鉛など健康維持に有用な成分もたくさん含んでいます。赤肉摂取で脳卒中のリスクは下がるという面もあります。何事にも良い面があれば悪い面もあり、オールマイティじゃない。そのバランスを正確につかんで行動することが重要」
日本では、全国の45~74歳の男女約8万人を対象にしたコホート研究が行われている。
コホート研究について、津金さんの著書には次のように説明されている。
年齢など一定条件を満たした数万~数十万人という大規模な集団を対象に、食生活や生活習慣などについて、ベースライン調査と呼ばれる基礎調査を行ない、その後、病気の発生について長期間追跡し、生活習慣と病気の発生との関連について、将来に向かって調査する研究。
(津金昌一郎『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』祥伝社新書)
1995年と98年に生活習慣に関するアンケート調査を行い、その後2006年まで8~11年間追跡調査を実施。日頃食べている肉類の総量と、赤肉と加工肉の1日当たりの摂取量に基づいて男女5グループに分け、各群がその後大腸がん(直腸がんと結腸がん)になる確率を調べた。
その結果、8万人のうち大腸がんになったのは1145人(結腸がん788人、直腸がん357人)だった。1日当たりの肉類全体の摂取量が100グラム以上の男性のグループと、赤肉の摂取量が80グラムを超える女性のグループは、ともに結腸がんリスクが高かった。ただし、肉類全体では結腸がんとの関連が見られた男性も、赤肉に限定すると有意な関連は見られなかった。