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 津金さんは、日本人の食事の特徴をどう見るのだろうか。

「全粒穀類とナッツは少なく、魚介類と豆類が多めで、赤肉と卵を除けば、だいたい摂取可能な範囲に収まっていました。日本人の赤肉摂取は1日当たり69.9グラムで、プラネタリーヘルスダイエットで提案されたのは11グラム。しかし、脳卒中が多い日本人にとっては、この量は少ないです」

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欧米では肥満が、日本はフレイル(虚弱)が問題

 今、特にアメリカでは平均寿命の低下が大きな問題になっているという。

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「コロナ禍前から、がくっと下がり続けています。主な原因は、貧困状態にある人たちがソーダ水を飲みながら、ハンバーガーとポテトなどジャンクフードを食べて太っていること。野菜や全粒粉穀物など植物性食品を豊富に取り、スポーツジムで運動しているイメージのアメリカ人というのは一部のエリート。底辺で苦しんでいる大半の人は、野菜を食べずに不健康な食事をしているから肥満になってしまう。BMIが30を超える肥満がすごく増えており、日本人の増え方とは程度が違います」

 欧米人の食事のもう一つ大きな問題として、ソーダ水(砂糖入り炭酸飲料)を大量に飲んでいる点を指摘する。

「日本人は緑茶を飲む習慣があるので、太らない。焼き魚定食にコーラは合わないでしょ。僕はハンバーガーを食べるときはコーラを飲みたくなるけれど、和食には緑茶がいい」 

 WHOによると、G7の中でBMIが30を超えている日本人(16年)は男性が4.8%、女性が3.7%。これに対して他の6カ国は、男性が20.1~35.5%、女性が19.5~37.0%と桁違いの多さだ。

「しかも、日本人男性のBMI平均値は上がっているけれど、女性は下がっている。極端なダイエットで痩せている人がどんどん増えており、20を割ると健康に悪い。特に20代女性の痩せ(BMIが18.5未満)が2割と多い。これまでメタボ対策で一生懸命、痩せさせようとしてきたけれど、今はフレイルのほうが問題ですよ

――ベジタリアン、ヴィーガンの食生活は環境には優しいと考えますか。

「環境負荷は少ない。日本人の4~5倍の肉を食べるアメリカのような社会では虚血性疾患が多いから、野菜を食べることは健康的。しかし、日本ではそういうことになっていない。最近のデータで、日本人の飲食の重量の84%はプラントベース、アニマルベース(動物性由来)は12%、シーフード(魚類)が3%と推計されています。タンパク質は魚、豆類、肉からほどほどに取っている点が良いのです」