1ページ目から読む
3/6ページ目

「赤肉摂取が一番高いグループでは男女ともにリスクが高かったけれど、他の研究ではあまりはっきりしない。それは、たくさん肉を食べている日本人が少ないから」

 ということは、大腸がんリスクが高いのは一部の肉食べ過ぎの人ということになるのだろうか。

「確かに日本人で一番肉を食べている上位20%は、もしかしたら大腸がんのリスクが上がるかもしれない。じゃあ、本当に肉は悪者なのか。米国で約30万人の男性を対象に、赤肉を食べる量によって約20 %ごとにグループ分けして死亡する確率をみた研究があります。赤肉の摂取量が多いほど死亡する確率は上昇していた。がんと循環器疾患による死亡リスクも上がっていた。でも、アジアの約30万人の7~16年間の追跡調査(13年)では、赤肉を食べている人のほうが下がっていた。特に循環器疾患の死亡リスクが低下しました。肉は脳卒中を予防する効果があったからです。ただし、肉を食べ過ぎると死亡率は上がるので、たくさん食べればいいという話でもありません。

ADVERTISEMENT

 ですから、肉をいっぱい食べている欧米社会においては、ベジタリアンは虚血性疾患の予防という意味では健康的ですが、日本人は赤肉の量について、一部の食べ過ぎている人を除けばあまり心配する必要はないのではと考えます」

「ヴィーガンの股関節骨折リスクは2倍」

 津金さんによると、ベジタリアンとヴィーガンが多いイギリスでは、健康や疾病との関連性を調べる研究が盛んに行われているという。

 2019年9月、医学誌「The BMJ」に掲載された英オックスフォード大によるコホート研究は、「魚を食べる人とベジタリアン(ヴィーガン含む)は、肉食の人に比べて虚血性心疾患のリスクが低い一方で、ベジタリアンの脳卒中リスクは肉食より高かった」などと報告している。

  研究は、虚血性疾患、脳卒中などの既往歴のない計4万8188人を対象に実施。内訳は、肉食の2万4428人、肉は食べないが魚を食べる人7506人、ベジタリアン(ヴィーガン含む)1万6254人。

 18年間にわたって追跡調査したところ、2820人が虚血性疾患、1072人が脳卒中になっていた。そのうち、虚血性疾患の発症率は、魚を食べる人は肉食より13%、ベジタリアンは22%それぞれ低かった。対照的に脳卒中の発症率は、ベジタリアンが肉食より20%も高かった。

 ヴィーガン、ベジタリアンと骨折との関係を調べた研究もある。20年11月に医学誌「BMC Medicine」で発表された英オックスフォード大が行ったコホート研究は、肉食の人(2万9380人)と、魚を食べる人(8037人)、ベジタリアン(1万5499人)、ヴィーガン(1982人)の食スタイルが違うグループを比較。病院の記録や死亡証明書などを基に6~23年間追跡した。