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 肉食を「1」として、他の三つのグループと比べた結果、股関節骨折のリスクは、ヴィーガンが2.31 、魚を食べる人が1.26、ベジタリアンが1.25。足の骨折リスクは、ヴィーガンが2.05、魚を食べる人が1.07、ベジタリアンが1.01だった。特にヴィーガンに倍以上の数値が出ていることには驚いた。

 その他についても、ヴィーガンは腕の骨折リスクが1.56、全体的な骨折リスクが1.43などと、他の食生活スタイルより高い傾向が出た。

「ヴィーガンは乳製品を取らないからカルシウムが不足するので、当然骨折のリスクは上がります。高齢者が股関節の骨を折ると、歩けなくなる。要介護になって自立できなくなるので大きな問題です。若い人でも骨折するケースがあるかもしれない」

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日本食は環境負荷が低い

 このような病気や骨折のリスクを知った上で、地球環境にも配慮しながら日本人が目指すべき食事とはどのようなものなのか。

「世界は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために、健康と環境を配慮した持続可能なフードシステムを実行する必要があります」

 その上で、EATランセット委員会(ノルウェーの財団が科学誌「ランセット」と組んだプロジェクトで、世界の科学者37人が参加)が提唱した食事「プラネタリーヘルスダイエット」に触れた。

 EATランセット委員会は、野菜、果物、ナッツ、豆類など植物性食品を倍以上に増やし、砂糖、赤肉などの消費量を50%以上減らす必要があると提言している。

 津金所長は、プラネタリーヘルスダイエットが推奨する1日のエネルギー量の2500キロカロリーの場合の食品摂取量を、国民健康・栄養調査(18年、20歳以上)に基づき、日本人平均の1930キロカロリーに換算して検証した。

科学的根拠に基づく人と地球にとって健康的な食品・栄養素の目標(2,500kcal/日当たりでの表示を日本人平均1,930kcal/日に換算)と日本人の摂取状況(出典 津金昌一郎「フードシステム研究」日本フードシステム学会 第27巻3号2020.12)図表作成=小林美和子

 その結果、表の通り、芋類、野菜、豆類はプラネタリーヘルスダイエットの目安を満たし、果物、乳類は若干少なめ、ナッツ類はかなり少なかった。一方、赤肉は目安の約6倍、卵は約4倍、魚は3倍取っていた。全粒穀類の数字は多いように見えるが、調理後の重量で示しているためで、原材料に換算すると半分以下になるという。