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「警告段階」で逃げ方は変わる

 といってもいきなり無差別に攻撃してくるわけではなく、たとえばスズメバチ類の場合、攻撃に至るまでに何度か「巣に近づくな」という警告を発する。野山を歩いているときに、周囲をハチが飛び回っていたら、近くに巣がある可能性が高い。それに気がついて巣から離れていけば、ハチもつきまとってこなくなるが、気づかずにさらに近づいてしまうと、数匹のハチが高い羽音を発してあたりを飛び回る。あるいは目の前でホバリングしながら大顎をカチカチ鳴らし、毒液をピュッピュッと噴射して威嚇することもある。

 このときに手で追い払おうとしたり、慌てて身をよじったりすると、ハチは自分たちが襲われたと思って怒りを増幅させ、攻撃を仕掛けてくる。素早い動きはハチを刺激してしまうので、しゃがむなどして姿勢を低く保ち、ごくゆっくりとしたスピードでその場を離れるか、動かずにじっとしていてハチが飛び去るのを待つのがいいとされる。

 万一、ハチの警告に気づかずに巣のすぐそばまで接近したり、うっかり巣に刺激を与えたりすると、ハチはいっせいに襲いかかってくる。そうなってしまったら、とにかく全力で逃げるしかない。ハチの攻撃範囲は、最も危険なオオスズメバチでも80メートルほどといわれており、一定の距離をとれば襲ってこなくなる。

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ハチを追い払おうとして滑落事故も

 ただ、山道は舗装道と違って石や岩、木の根などの障害物があちこちにあり、急いで逃げるのは容易なことではない。2020(令和2)年9月22日、佐賀県有田町の竜門峡付近で起きた、登山中の60~70代の夫婦2組がスズメバチに襲われた事故では、ひとりの男性がハチを追い払おうとした際に沢に滑落し、腕を骨折するケガを負ってしまった(ほかの3人は刺されただけの軽症ですんだ)。

 森林総合研究所がまとめた『森林レクリエーションでのスズメバチ刺傷事故を防ぐために』という小冊子では、退路が限定されるようなケースでは、〈首から上を服などでかくし、肌が出ているところをできるだけ少なくして、身をかがめ、その状態のまま、その場所から少しずつ遠ざかりましょう〉としている。