歴史的な円安に直面し、否応なしに「経済」への関心が強まる昨今の日本。将来の糧を得る手段として投資も注目されているが、では、海外投資において必要な知識や「読み方」には何があるか。元為替ディーラーで経済評論家の岩本さゆみ氏が語った。
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相場は山あり谷あり。永遠の右肩上がりはありえません。目先の過度な円安が今後どうなるか。それを測るヒントとして、「スイス・フラン」の動きを考えてみたいと思います。
〈こう語るのは、日・米・加・豪の金融機関でバイス・プレジデントとして国際金融取引(トレーディング業務)に従事した経歴をもち、金融機関専門誌「ユーロマネー」のアンケートで為替予測部門の優秀ディーラーに選出されたこともある岩本さゆみ氏だ。
新NISAのスタートもあり、投資ブームが続いているが、為替ヘッジをせずに海外株投資信託を保有している人にとって、円安の時は為替差益が生じて、海外投資にはプラスの要因となるが、円高の時は為替差損が生じて、海外投資にはマイナスの要因となる。為替取引の最前線を経験した岩本氏が「為替相場の読み方」を指南する。〉
怒号が飛び交う取引現場
1990年代初頭、私は新卒採用でそのまま外資系銀行のディーリング・ルームへと配属されました。100人のディーラーがいれば5年で3人に減ると釘を刺され、コツコツ調べ物をして積み上げていくような仕事を所望していたのに、嗚呼、何と恐ろしい場所に紛れ込んでしまったのか、と思いました。
パワハラ、モラハラの概念が皆無だった時代です。ディーリング・ルームでは怒号や罵詈雑言だけでなく、実際にモノも飛び交っていて(腹を立てた周囲のディーラーはよく受話器を投げつけたり、ごみ箱を蹴飛ばしたり)、女子大での安穏な生活からは想像だにしなかった世界が繰り広げられていました。
それでも何とか、40歳手前まで、国際金融取引の最前線で生き残ることができたのは、単に自分が臆病だったからです。ビクビクしながらの取引は慎重さやリスク管理の意識へと繋がり、結果的に生き永らえたようなものだと今更ながらに思います。
相場取引は勝ったり負けたりです。身も心も懐もすり減らして、相場に二度と参入できない状態に陥ることだけは避けねばなりません。余力さえ残せれば、たとえ瞬間的にどんなに打ちひしがれても、再度立ち上がって勝負に挑むことができます。