国道といっても実際に国が管理している国道は限られており、都道府県が管理している国道のほうが多い。県境付近では各県のせめぎ合いが見られることもあり、これは鳥取県側が設置した看板なので、「ウチのほうが道幅広いんだぞ」と言いたいのかなと勘ぐっていた。しかし、看板をよく見ると、何やら消された文字の痕跡があった。

酷道未開通時代の看板が再利用されている

 “一般国道482号は県境まで”と“町道岩小屋線”の文字が透けて見える。どうやら、国道未開通時代に設置された看板の一部を隠して、そのまま使い続けているようだ。鳥取県が見栄を張ったのかと勘ぐってしまったが、私の早とちりだったようで大変失礼した。

管理する県によって道路設備が一変…

 県境は峠になっており、ここからは狭い道を下ってゆく。兵庫県側はガードロープが多かったが、鳥取県側はガードレールだ。管理する県による道路設備の違いを観察するのも楽しい。

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これより鳥取県へ
鳥取県側の酷道は短いが、ガードレールなどの違いがある

 県境から1キロほど走るとセンターラインが復活し、酷道区間は終了となる。酷道の終わり地点には、氷山命水という湧水があったので、喉を潤した。

湧き水でちょっとひと息。現在、水汲みは有料になっている

 国道482号はこの先、国道29号と合流して多くの国道と重複しながら米子市まで続いている。せっかく鳥取まで来たのだから、鳥取砂丘や三徳山三佛寺の投入堂、なしっこ館、倉吉の廃線跡などを満喫し、帰路についた。

鳥取砂丘をゆく筆者
三徳山三佛寺の投入堂

 この酷道482号は、新たに誕生した酷道として、大変注目している。明治時代に国道制度がはじまり、戦後になって自動車が走りやすいように整備が進められた。狭隘路の酷道は、ある意味、時代に取り残されてきた国道といえる。

なしっこ館は、梨農家育成施設みたいな展示が非常に面白い
倉吉の廃線跡。雰囲気がよく、徐々に人気が出てきている

 また、大きな橋やトンネルがない酷道は、地形に逆らわず、川に沿い山肌に張り付くようにして伸びている。自然に打ち勝つのではなく、時には災害による被害を受けながらも、自然と共存してきた道といえるだろう。それもまた、酷道に魅力を感じる理由だ。

酷道区間の鳥取側終点。大型車通行不能を県境よりと記しているが、これも町道時代に設置されたものと思われる

 私は酷道の魅力を多くの人に伝えたいと思っているが、実際に酷道を訪れるには危険も伴うため、十分に考慮いただきたい。また、酷道であったとしても生活や生業のため、その道を必要としている人々がいることと、維持管理している人たちの努力があることを、忘れないで通行してほしい。

撮影=鹿取茂雄