展開は非常に早かった。道幅が一気に狭くなり、対向車が来たら迷うことなくバックするしかない。そして嬉しいことに、酷道のスタート地点ともいえるこの位置に、国道標識が立っていた。国道482号であることを示す逆三角形をした青い標識だ。

ここから酷道区間がスタートする

 酷道というのは“国道でありながらも”酷い道のことだ。国道ではないただ酷い道なら、全国にたくさんある。それだけに、国道であることを分かりやすく示してくれる国道標識の存在意義はとても大きい。

 そうしたこともあって、我々酷道マニアは国道標識のことを、その形から“オニギリ”と呼び、愛でている。

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軽自動車でもほとんど余裕がない道

 さて、道幅は非常に狭く、軽自動車でもほとんど余裕がない。普通車であっても幅の大きい車なら、左右両方のラインを踏みながら走ることになるだろう。

狭い道幅

 ヘアピンカーブを抜けてしばらく走る。

ヘアピンカーブ

 すると、道幅は相変わらず狭いままだが、路面が真新しい舗装になった。

ピカピカの真新しい舗装

 これだけなら特に珍しいことではないが、ガードレールなどの道路設備も全てピカピカだ。これこそが、酷道482号が非常に特異的であることを示していた。

舗装だけではなくガードロープも真新しい

 このピカピカの道路は、2019年に開通したばかりの区間なのだ。

 日本には国道が459路線あるが、新たな国道は1993年に追加されて以来、全く増えていない。国の根幹となる道路網の指定は既に終了したとされており、今後、路線が増える予定はないというかっこうだ。現在は既存国道の整備だけが進められている状態のため、酷道は年々数を減らし続けている。つまり、酷道は、いずれは消滅してしまう運命にあるといえるだろう。

軽自動車でも左右の白線を踏みそうな幅しかない

 この国道482号は1993年に国道指定を受けたが、4箇所もの未開通区間を抱えていた。国道の中には、将来的に繋げる計画で、実際には道路が繋がっていない未開通区間が含まれることがよくある。それが徐々に開通し、最後の未開通区間となっていたのが兵庫~鳥取県境の6.4km間なのだ。