さらに追い打ちをかけるようなことが…

 さらに追い打ちをかけるようなことがある。築古マンションで、すでに住宅ローンの大半を返済し終わっている高齢の区分所有者たちだ。築40年超のマンションは国土交通省の調べでは全国に137万戸(2023年末)。全国分譲マンション戸数(同704万3000戸)の2割近くが大規模修繕や建替えを考えなければならないマンションだ。

 国はこうした築古マンションの建替えを促進させようと、3月4日にマンション関連法改正案を閣議決定した。具体的には耐震に問題がある、外壁の損傷が激しく周囲に危害が及ぶようなマンションについては従来の5分の4の決議が必要だったものを4分の3に改正し、建替えを促した。また建物の解体、売却、リノベーションなどの決議について従来は全員の同意が必要であったものを所有者が不明な住戸の議決権をカウントせずに4分の3の同意で決議できるように改正した。

日本でも確実にマンションのスラム化が始まる

 だが国の思惑とは裏腹に、議決権を握る区分所有者の年齢構成は年を追うごとに高齢化が激しくなるばかりだ。

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 国土交通省の調査によれば、2023年度のマンション世帯主の53.7%が60歳代以上だという。これを1984年以前に建設された築39年以上のマンションに限定するとその割合はなんと76.2%となる。うち55.9%は70歳以上だ。

 この年代になってくるともはや建替えなどという面倒なことを嫌うようになるし、積立金が足りなければ大規模修繕も実施しないようになることが容易に想像できる。もはや議決権割合の問題ではなく、高騰する費用とこれを負担する所有者の懐具合も気持ちも全く整合しないことになっているのである。

 この状況の行き着く先は何か。日本でも確実にマンションのスラム化が始まるのだ。今は目先の金利の動向にモヤモヤしている所有者は、これから迫りくる管理費や修繕積立金の値上げ、ローンを無事に支払った後で襲い掛かる建替えも含め、常に問題に晒され続けるのがマンションなのだ。そう、マンションは永住する住まいではないのである。