「多くが廃業、生活保護を受けている元ヤクザも…」
首都圏に拠点を構えるキャリアが長い指定暴力団の幹部が近年の状況について説明する。
「暴対法ができた92年は、活動は規制されたがそれでも何とか乗り切れた。しかし暴排条例の時は、繁華街の飲食店からカネを徴収するシノギに頼っていた者の多くが廃業した。もともと飲食店や雀荘のオーナーだった連中はまともな仕事に就くやつもいたが、何も仕事がなくて生活保護を受けている元ヤクザがいるのも事実だ」
元暴力団組員の社会復帰をめぐっては今年2月、警察当局と暴力団の双方が注目していた訴訟の判決が水戸地裁で言い渡された。茨城県内に住む元組員の男性が就職先の給与の振込口座の開設をみずほ銀行に申し込んだところ拒否され、損害賠償を求めて提訴していたのだ。しかし判決は請求棄却となり、銀行側の勝訴となった。
みずほ銀行などの金融機関は、暴力団組織から離脱した元組員であっても組織との関係が継続している可能性への懸念から、離脱後5年間は取引をしないことで反社会的勢力の排除に取り組んでいる。
この訴訟のケースでは元組員は2017年に組織を離脱し、2023年に口座開設を申し込んでいるために5年が経過していたが拒否されたことになる。
それでも水戸地裁は判決で、みずほ銀行が口座の開設を拒否したことは正当と認め、理由として元組員の就職先が警察の支援協賛企業ではないなどの理由を上げた。つまりヤクザ組織から抜け出しても、警察の目の届くところで就職しない限りは口座を開くことも難しいのが現状だ。
前出の指定暴力団の古参幹部も、この裁判に注目していたが判決には落胆したという。
「この裁判で元ヤクザが負けたのは納得できない。5年も経過しているから組織とは無関係のはずで、せっかくヤクザを辞めて就職しようと思っても、給与の振込口座がなければ就職後の生活が成り立たない。またヤクザに戻ってしまうかもしれない」
暴力団に加入する若者が近年急減していることについても諦め顔だ。
「自分の組織も昔は100人以上いたが、いまや数十人だ。若い者が入ってこず、うちも30代はいても20代は1人もいない。今の若い不良は半グレのようなグループでつるんで特殊詐欺をしたり、闇バイトを募集したりしているのだろう。ヤクザになって親分と子分などの面倒な関係に巻き込まれるより、気の合う仲間と一緒の方が楽しいに決まっている。ヤクザの世界も一般社会と同じで少子高齢化だ」
ついに1万人を切り、高齢化も止まらない暴力団の世界。このまま衰退の道を進むのだろうか。
