新庄監督流「王道の改革」に学べ

「日本の危機の本質」経営リーダー編

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サビついた企業はどうしたら甦るのか 

「優勝なんか、一切目指しません」――。

 2021年の就任会見でそう語ったのは、北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督である。この発言は物議を醸し、特に年配の野球ファンや専門家から非難囂々だった。実際、1年目は年間80敗を喫して最下位に沈み、すぐにでも解任されるのではないかと見られていた。

 だが、その後は新庄流の改革が結実した。そもそもの戦力が整っていない中で、まだ有力な中堅・ベテラン選手を退団させ、ドラフト下位選手も含めた若手を抜擢。典型例は監督就任時のドラフト8位の新人、北山亘基投手を開幕投手に指名したことだ。当時はメディアで「気まぐれ」という見出しも躍ったが、いまやチームのエースに成長。今年6月にはあわや完全試合かという快投を演じた。その対戦相手が、資金力が豊富で、内外から選手をかき集めるも首位に大きく離された読売ジャイアンツだったことは皮肉だ。

 新庄監督の就任2年目以降、チャンスを与えられた若手選手が次々と頭角をあらわし、チームの一体感も醸成された。昨年は2位に入り、クライマックスシリーズに進出。今年も首位争いを演じている。

 新庄監督がやったことは一見ハチャメチャにも見えるが、企業経営あるいはコーポレートガバナンス(企業統治)の観点に立てば王道といえる。経験値は高いが、伸びしろは小さく、チームの士気を考えると負の側面も多い選手を容赦なく切る。最初に、いわば既得権の打破に踏み切った。次に、未知数の若手を発掘し、登用。資金力に限界があるからこそ、既存の戦力を適材適所に配置し効率的にチームを構成した。つまり、組織としての新陳代謝を進めたのだ。企業経営者という観点からしても、見事というほかはない。

若手を抜擢した新庄監督  Ⓒ時事通信社

 この「既得権の打破」と「新陳代謝の促進」は本稿で論ずるように、大企業のみならず中小企業、スタートアップにとっても極めて重要な視点であり、本稿執筆のモチーフである。

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source : 文藝春秋 2025年10月号

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