親子のかたちは時代を映す。昭和59年から40年続いた長寿連載、一号限りの豪華リバイバル
父は83歳で母は90歳で亡くなった。私は今86歳、父を超え母に近づいている。先日、部屋の整理をしていたら戸棚の隅から古い文箱が出てきた。何を入れていたのかと開けてみると、それは母が生前私に送ってきた俳句帳の束だった。数えてみると8冊もある。懐かしい母の文字でどのページも埋まっていた。
母の作句は私が勧めたのである。晩年、長兄の家族と暮らしていた母は私が訪ねるといつも退屈だと愚痴をこぼした。だったら俳句でも作ってみたら、気晴らしになるよと言ったのがきっかけで母は作句に励み、雑誌に投稿して時には掲載されることもあった。
〈留守の間が 己が城かや 辛夷(こぶし)咲く〉
恐らく、兄の家族が出かけている束の間の解放感を句にしたのだろう。兄嫁との関係は決して穏やかなものではなかった。
〈覚えなき 人会釈して 秋の暮れ〉
「知り合いだった筈なのに、名前も思いだせなくて」と、母は言うようになった。
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