親子のかたちは時代を映す。昭和59年から40年続いた長寿連載、一号限りの豪華リバイバル
私の父は、二つの人格を持っていました。
1人は、人や動植物に対して、とても愛情深い人。その父は私の良き理解者でした。私のことをとても可愛がってくれました。ただし、私と2人きりの時限定で。
もう一人の父は、破壊的で、冷酷。二つの人格は、私と2人でいる時と、母がそばにいる時とで、確実に使い分けられていました。

両親には、兄弟が多かったために、親から関心や愛情が注がれず、ネグレクトを経験しているという共通点がありました。母の心には深い闇があって、妄想の中で被害者になることを好む傾向にありました。その危うさを支えていたのは父。父もまた母に依存されることで、低い自己肯定感を埋めていたような気がします。2人は不健康に依存しあっていました。
父は母の情動に影響を受けやすく、さっきまで笑っていたかと思うと、急に激昂し大声で怒鳴ったり、短気を起こしては、物にあたる傾向にありました。彼の地雷が、どのタイミングで何によって踏まれるのか見当もつかず、母といる時の父が、私はとても怖かった。私は、今でも声の大きな男性が苦手。

母に精神的な病名がついていたことを知ったのは、母の死後、病院から診療領収書を取り寄せた時のことでした。母の私に対する虐待は日常的で、常に身に覚えのない言いがかりから始まりました。彼女は、抵抗する私を着物の腰紐で縛り、手首に火のついた線香を押し当て、体のあちこちを物差しで容赦なく叩きました。虐待は大抵、父へ見せつけるように始まりました。それでも父は母の暴力を止めてはくれませんでした。
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