ポスト・リベラリズムと中間共同体
2025年に誕生した第二次トランプ政権も今月で丁度2年目に入る。が、その背景にある「ポスト・リベラリズム」の思想はあまり知られていない。その点、ヴァンス副大統領とも関係が近いデニーンによる本書は、その政治思想の輪郭を明らかにすると同時に、彼らが何を目指しているのかを示していて興味深い。
21世紀に入り、リベラリズムの限界は明らかになりつつある。
個人の「自由な選択」の結果としてもたらされた貧富の格差と国内の分断。グローバル化した「自由」による労働力の移動(移民)と産業移転の加速(産業空洞化)。しかし、「伝統からの解放」と「個人の自由」以外の価値を持たないリベラリズムは、そんな現実をただ指を咥えて見ているしかなかった。いや、デニーンによれば、それこそがリベラリズムの本質なのだ。デニーンは言う、「リベラリズムは成功したがゆえに失敗した」と。

まず、リベラリズムは、社会契約論(ホッブズ、ロック、ルソー)が示すように個人をあらゆる場所、時間、自然の拘束から切り離し、それを抽象的な存在(理性的存在)として扱う。が、その結果として、リベラリズムが成功すればするほど、個人は他者との関係を喪い、孤独と不安へと陥り、次第に「技術」と「国家」にしがみつくことになる。リベラルな個人主義は、自分を守るテクノ主義や国家主義と必然的に結びつくのだ。そしてついに、技術と国家を手にした貴族と、それを手にできなかった奴隷という新たな貴族制(リベラロクラシー)を生み出すことになるのだった。
では、私たちはどうすべきなのか?
そこでデニーンは、近代の新たな政治=技術思想に飛びつくのではなく、アリストテレス以来の伝統的な自由概念に戻ろうと言う。「自由」とは、自分の能力や欲望の解放ではなく、むしろ「自制」の異名ではないのか? 自制によって他者との摩擦を抑制し、そこに調和ある社会を実現する力のことではないのか?
そして、その自制力を育てる場所こそ、具体的な人間関係を宿す家庭であり、また、それが生きられる中間共同体(ポリス=地域)の慣習文化なのである。
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