【一押しNEWS】大学入試改革失敗の「本質」/10月25日、アエラドット(筆者=小林哲夫)
初入閣した若き環境大臣が、台風15号の復興支援もままならない日本をあとにして、初めて国連に参加したニューヨークでセクシーにステーキをキメた翌日、同じく国連にヨットで乗り込んだ16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんが叫んだ。“How dare you!(よくもそんなことを!)”
彼女は地元スウェーデンで2018年の夏から「ハンガーストライキ」ならぬ「学校ストライキ」を1人で始めた。人間は食べなければ死ぬ。自分の命をかけて抗議の意思を示すのがハンガーストライキだ。同様に人間は学ばなければ死ぬ。トゥーンベリさんは自分の人生をかけて抗議の意思を示すために、毎週金曜日、学ぶ権利を放棄するストライキを行っているのだ。
彼女の演説は世界中で熱狂的な支持を得たが、一方で少なくない大人――特に中年男性たちが、彼女の振る舞いを冷笑した。要約すれば「そんなにカッカするなよ」ということらしい。訴えの内容を批判するのなら理解できる。しかし文字通り必死の訴えを、それが必死過ぎるという理由で冷笑するのは、少なくとも大人が子どもに見せる態度ではない。
自分たちの自由を権利を生活を守るため、声を上げなければいけないときがある。私たちがいま享受する自由や権利や生活は本来、先人たちがそうやって勝ち取ったものであり、いつまた私たちの手から滑り落ちてしまうかわからないものであることは、香港での若者たちの必死の活動を見ればわかるはずだ。なのに私たちはそのことに、あまりに無自覚ではないだろうか。
その後「北欧ではなぜはっきり意思表示できる子どもが育つのかを記事にしてほしい」という依頼を受けたがお断りした。着目すべきはそこじゃない。子どもたちの必死の声に耳を傾けようとする大人が多い社会か、「騒いだって無駄だよ」とあきらめの態度を決め込む大人が多い社会か。それこそ教育の成果だろう。
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source : 文藝春秋 2020年1月号