■連載「日本人へ」
第267回 AIでも絶対に追いつけないタイプとは?
第268回 アナログの私がAIを歓迎する理由
第269回 素朴な疑問
第270回 外野席からの想い
第271回 今回はこちら
世界中が騒然としている今現在、日本の出番はない。強国には優しいのに弱小国には強く出るトランプのせいでもあるのだが、積極的な関与が求められないということは、考え方によっては幸いなことでもある。事態が落ちつくまで「待つ」しかないのだから。
しかし、何もしないでただ待つのと、この間を利用して、日本だけでもやれることをやりながら待つ、のではちがう。前回で述べた、東京を中心にした東日本全域の活性化と大阪を中心にした西日本全域の活性化はその一つ。この大テーマを説くときの下河辺淳がくり返し言っていたのが、国家を預かっている以上は、最悪の事態を頭に置きながらそれへの対処法を常に準備しておくのが、政策官僚の責務である、ということであったのを思い出す。それで今回私がとりあげるのが、おコメなんですね。
昨今の日本を騒がせた米騒動に刺激されたから、だけではない。米ならば産出するイタリアに住んでいながら、その中でも日本のコシヒカリを移植して「イタヒカリ」と銘打っている米を食べながら、なぜイタリア産の米は不味(まず)いのかと思ってきた私の、以前からの疑問によるのです。
これが、精米法のちがいにあるとわからせてくれたのが、本誌上に四回にわたって連載された、東洋ライスの雜賀慶二社長のインタビュー記事であったのだ。
この人が面白いのは、何であろうと彼自身の頭で考えるところにある。学歴は中学卒だけのこの人は、すぐに家業であった精米機販売業を継いだというから、高学歴を経ることで身についてしまう従来のやり方から、ごく自然に自由でいられたからではないかと思う。この人が最初に発明したのが、「石抜選穀機」。米の中から石粒を取り除く機械のこと。この機械の発明は、雜賀氏を大もうけさせたらしいのだが、お金持になってもこの人の、自分の頭だけで考えるやり方は変わらない。それを私なりに整理すれば、次のようになる。
まず、食べて美味(うま)いのは日本で精米した白米を使った御飯。しかし白米だけ食べていたのでは健康に悪い。と言って、健康には良い玄米飯だけ食べるのでは、不味い飯ばかり食べることになり、日本人を米食嫌いにする危険さえある。健康にも良くて美味くもあるコメを作れないか。雜賀氏の頭は、その後も休みなく働きつづけたようである。
その成果は、「無洗米」「金芽米」「金芽ロウカット玄米」として現実化する。それどころか、この時期の雜賀氏の頭の中には、増える一方で困っている国の医療費を減らすことまで入ってくるのだから、思考法も政治家の水準。健康にも良くそのうえ美味い米を食べていれば、米食離れの防止に役立つだけでなく、日本の医療費を減らすことにまでつながるのだから、と。
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