偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム
★利根川進
分子生物学者の利根川進(とねがわすすむ)は、免疫系の抗体遺伝子や脳の記憶についての研究で、常に最先端を歩き続けた。

直截な発言がときには不遜な印象を与えたが、「科学者は芸術家に近い」と語ったことがある。「科学者が自分に限界を設定したとき、その人は科学者ではなくなる。いつも夢と冒険の精神をもっていなくてはならないんです」。
1939(昭和14)年に名古屋市に生まれる。父は紡績会社の工場長。中学2年のときから東京の叔父の家に下宿し、日比谷高校に入学する。一浪して京都大学理学部化学科に入るが、分子生物学に魅かれて大学院では渡邊格に師事。渡邊は「分子生物学をやるなら米国に行け」といってカリフォルニア大学サンディエゴ校を勧めてくれた。
69年に同大学に隣接するソーク研究所に入り、2年後にスイスのバーゼル免疫学研究所の主任研究員、81年にアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授となる。この間、免疫系の研究を続けて驚くべき発見をする。
「遺伝子は安定している。しかし免疫系の場合は、抗体遺伝子に限って、凄い速度でDNAの組み換えが起こる」。免疫学や遺伝学に、根本的見直しを迫るものだった。
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