昭和44(1969)年にコム デ ギャルソンを設立したファッションデザイナー、川久保玲(かわくぼれい)(1942―)は昭和56年にパリに進出した。ファッションの本場で高い評価を受けた川久保は次々とファッションの常識を覆していった。ファッション・ジャーナリストの生駒芳子(いこまよしこ)氏が解説する。
70年代後半、パリのファッション界は、オートクチュールの衰退が見え始め、プレタポルテの隆盛の兆しが予見された頃で、その先駆けとなったのが、イヴ・サンローランやケンゾーだった。一方、日本のファッション界は草創期の熱を帯びていた。
こうした状況の中、1981年、東京からまた一人、デザイナーがパリにやってきた。川久保玲である。

パリで披露する初めてのコレクション。当時のインターコンティネンタルホテルの一室で数台のラックに服をかけ、展示会を行うというスタートだった。5人のモデルに服を着せてプレゼンテーションを行ったが、訪れた目利きのバイヤーやジャーナリスト達は揃って目を輝かせた。
フラットシューズにボディラインを覆うミニマルな直線裁ちのフォルム、ときに全身黒で覆う着こなし。それは、当時のパリを席巻していた女らしいボディコンシャスな服とは一線を画す、斬新なスタイルだった。その尖ったセンスが、新しいファッションや女性像を模索していたジャーナリストたちの心を強く打ったのだ。徐々に、そのインパクトはクリスチャン・ディオールの「ニュールック」以来と言われ、また提示する自立した女性像はココ・シャネル以来の偉業であるとも称され、雑誌や新聞でニュースとして伝えられるようになった。
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source : 文藝春秋 2010年9月号

