パリを拠点に、ファッション界のレジェンドとして名を馳せた髙田賢三(1939〜2020)。ファッションジャーナリストの渡辺三津子氏が活躍の軌跡を辿る。
「僕、一人ぼっちになっちゃったんです」
髙田賢三さんは初めて会うなり、そう話し始めた。20世紀も終わりに近い頃だったはずだ。取材の場で、このように自身の人生を裸で晒すような言葉を発する人は滅多にいない。誰もが知る世界的ファッションデザイナーでありながらも、温かで人懐こく、飾らない人柄。なので、誰からも愛される。
賢三さんは人生で最も大切な2人の人間を立て続けに失っていた。一人は公私共にパートナーだったグザヴィエ・ドゥ・カステラ氏で、1990年に病死。もう一人は、ブランドの立ち上げから賢三さんを支えたパタンナー近藤淳子さんで、翌年に脳梗塞で斃れた。
90年代は「ケンゾー」にとっても受難の時代で、ファッション界が劇変するなかビジネスも低迷、93年にはLVMHグループにブランドを売却し、経営から退いた。
私が会ったのは、自身のブランドのデザイナーからも退くことを決意し、新しい生き方に目を向けようとしていた時期だった。しかし賢三さんは寂しさを語りながらも、輝く白い歯を見せて柔らかく笑っていた。
髙田賢三さんは1970(昭和45)年にパリでブランド「ジャングル・ジャップ(後に「ケンゾー」に改名)」を立ち上げ、初めてのショップをオープンする。日本から持ち込んだ浴衣地や羽織の裏地などを使った服が話題を呼び、若い女性に人気の「エル」誌の表紙を飾り、注目の的に。68年の五月革命後、若く自由な空気が高まっていたパリでは、高級仕立てのオートクチュールから既製服のプレタポルテへとファッションにも“革命”が起きていた。
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