投手が甲子園で燃え尽きぬために

巻頭随筆

桑田 真澄 元プロ野球選手
エンタメ スポーツ 教育

 日本高等学校野球連盟は、第92回選抜大会(3月19日開幕)から全ての公式戦で1人の投手の1週間の投球数を500球に制限しました。

 新たな1歩ですが、小さな1歩。これで終わったら小手先の改革に過ぎないでしょう。僕は高校時代に誰よりも連投し、誰よりも投げてきた。その経験からみて、週に500球では何も変わらないし、選手の身体を守るというゴールにはほど遠いというのが率直な感想です。

 プロと高校生で、昨年夏の登板数と投球数を比較したデータがあります。夏の甲子園が行われた17日間の期間中に、巨人の菅野投手は3試合で332球、ヤンキースの田中将大投手も3試合で269球を投げました。一方、甲子園で決勝に進んだ履正社の清水投手は5試合594球、星稜の奥川投手は5試合で512球も投げたんです。肉体的にも精神的にも高いレベルにあるプロ野球の一流投手でさえ、中4日以上間隔を空けて登板しているのに、日本の高校野球では成長過程の投手が短期間に連投を強いられている現実が見てとれます。

 また、新たな制限である1週間あたりの投球数を見ると清水投手の最多は350球、奥川投手は379球でした。「今のままでは投手の身体を守れない」という問題意識から今回のルール作りが始まったはずなのに、500球の球数制限では何も変わらないのです。

 米国では、MLBと医師たちが投球障害を防ぐために、20年近くにわたる詳細な調査研究を経て、「ピッチスマート」というガイドラインを設けました。年代別に1日の投球数や、次回登板までに必要な休養日数を定めて、2014年から実施しています。

 米国は子供からメジャーリーガーまで、どのように投手を守っているのか。それこそが「球数制限」なのです。

 米国の小中高、大学と試合を観てきましたが、先発投手は週に1度しか投げないし連戦連投なんてあり得ない。また、1日に100球以上投げることはないのです。

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source : 文藝春秋 2020年4月号

genre : エンタメ スポーツ 教育