映画館は社会のインフラだ

巻頭随筆

浅井 隆 アップリンク代表
エンタメ 社会 映画

 アップリンクは、映画を劇場に届ける映画配給事業と、映画を上映する映画館を運営する映画興行事業を主におこなっている会社だ。

 武漢での新型コロナ感染が報じられ、3月末には小池都知事が都民に週末の外出自粛を呼びかけたので、まず3月28、29日の週末を休館した。その時は週末の自粛要請に従い休館する映画館とそうでないところがあったが、翌週の週末4月4、5日は都内の映画館は全部が休館となった。そして4月6日、翌日に緊急事態宣言が発表されると報じられるというので、東京の映画館がそれより1日早く、平日も全部閉まった。

 アップリンクでは、3月末からお客さんは外出の自粛を十分行っていて、1回の上映で観客がゼロということも増えてきて、緊急事態宣言が出ようが出まいが、開けていても赤字の状態だった。

 そして4月16日、全国に緊急事態宣言が発令され、4月18日土曜日から、日本のほぼ全部の映画館が休館した。この時期はすでに、日本だけでなく、ヨーロッパ、アジア、アメリカの映画館が新型コロナ感染禍で休館するという映画業界にとっては想像を絶する大打撃となっていた。

 都や国の補償も発表され、アップリンクもすぐに申請をしたが、この原稿の執筆時点(5月21日)では1円も振り込まれていない。休館をしていても、家賃やリース代、スタッフの休業補償と出て行くお金は大きい。大企業は内部留保なんてものがあるかもしれないが、中小企業は自転車操業なので、映画館の売上がゼロとなると成り立たない。

 政府は補償が十分でなければ無利子(3年間)、無担保の借金を勧めるが、銀行に書類を出せたのは、今日5月21日だ。また、4月に書類を郵送していた政府系の金融機関日本政策金融公庫の面談は明日22日まで待たされているという状況だ。しかも電話での相談時には「既存の融資とは別枠とは言っているけど、まあそれは建前で」と言われ、融資の審査が下りても実際会社の口座にお金が入ってくるのは、銀行では7月過ぎと言われている。

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source : 文藝春秋 2020年7月号

genre : エンタメ 社会 映画