コロナで苦しむ映画業界 同時配信にドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が抗議文

旬選ジャーナル

Ms.メラニー オスカー予想屋業
エンタメ 映画
ワーナーメディアが、2021年のワーナー劇場公開予定作品17本すべてをHBO Maxにおいて追加料金なしで同時配信する――。この一報に対し、『メッセージ』などの監督で知られるドゥニ・ヴィルヌーヴらが抗議の声をあげた。30年にわたってアカデミー賞をウォッチし続け、『なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」』の著書があるMs.メラニーが解説する。

【選んだニュース】(12月10日、米バラエティ/筆者=ドゥニ・ヴィルヌーヴ)

 12月3日に、米国大手スタジオを抱えるワーナーメディアが、2021年のワーナー劇場公開予定作品17本すべてを自身の運営する会員制ストリーミングサービスHBO Maxにおいて、追加料金なしで同時配信すると発表。初の試みとして2020年12月の無料同時配信を決めた大作『ワンダーウーマン 1984』に続いてワーナーが下した決断で、コロナ対策として2021年限定の措置というが、大きな波紋を呼んでいる。

 配信同時公開はコロナの影響が広がり始めた2020年3月から、ユニバーサルやディズニーなどのスタジオも行ってきたが、プレミアサービスとして劇場チケットと同等かそれ以上の値段を払って見る配信サービスであり、定額制配信において追加料金なしで新作を見せるのとは、興行に及ぼす影響の大きさが違う。

 この一報に対し、『メッセージ』などの監督で知られるドゥニ・ヴィルヌーヴによる猛烈な抗議文が業界誌VARIETYに掲載された。自身の新作『DUNE/デューン 砂の惑星』は、コロナの影響で公開が2021年に延期され、今回の措置で直接的な影響を受ける作品のひとつである。ヴィルヌーヴは今回の決断が、2018年にワーナーを買収したAT&Tという通信会社の生存競争のため(=2020年5月の開設以来、苦戦を続けるHBO Maxの会員数を増やすため)に17本の作品を犠牲にしたことに他ならず、映画の未来や映画ファンの気持ちを踏みにじる行為だと痛烈に批判した。彼は、大勢で一緒に笑ったり泣いたりして作品を楽しむという文化は、人間が必要とする欲望であり、配信サービスが主力になってきたとしても、娯楽大作を劇場で体感できる場所は守らなくてはならない、と言う。

 ヴィルヌーヴの手記が発表される数日前、このニュースにいち早く反応したのはクリストファー・ノーランだった。2002年以降、ワーナーと契約を結び、ほとんどの大作をワーナーのもとで作り続けているノーランは、劇場公開の重要性を訴え続ける映画人の一人である。

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source : 文藝春秋 2021年2月号

genre : エンタメ 映画