日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。
★経団連人事に異論
経団連は、新任の副会長としてディー・エヌ・エー(DeNA)の会長、南場智子氏、日立製作所の東原敏昭社長ら7人を起用する。
6月1日の定時総会を経て新体制となる。任期は2期4年。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は病気療養が長引くが、オンライン記者会見で「あと1年強の任期を完遂したい」と悲壮な決意を語った。
中西人事の目玉は、DeNAの南場氏の副会長就任だ。女性の副会長就任は初めてのことである。経団連は会員企業に女性の登用を呼びかけながら、副会長以上の要職を男性が独占するという矛盾した状態を続けてきた。
「実は、DeNAが経団連に入会したのは今年の3月1日。彼女の起用に備えて、環境を整えていた」(経団連の副会長の一人)
たしかに耳目を集める副会長人事だが、経済界では散々な評判だ。
「中西会長の発案で、副会長の枠を18人から20人に増やしたこと。ただでさえ下がっている副会長の価値がさらに下がる。話も散漫になって提言にも重みがなくなる」(経団連の元副会長)
一方で財界・経済界の首脳たちは日立製作所の東原社長が副会長になることに強い違和感を示している。同一企業から会長・副会長が出ることになるからだ。
最大のサプライズは、トヨタ自動車が副会長を出さなかったことだ。早川茂副会長が経団連の副会長の任期を了え、審議員会の副議長に横滑りすることになった。経団連が現在の体制になった02年以降、トヨタ出身者が会長、副会長から外れるのは初めてである。
「トヨタの豊田章男社長が経団連とははっきり距離を置いたということだろう」(経団連関係者)
トヨタが経団連に三下り半を突き付けたのでは、との見方が急速に広まっている。
南場氏
★楽天、日本郵政の勝算
楽天の三木谷浩史会長兼社長が起死回生の勝負に出た。
4月1日、社名を楽天グループに変更。その直前の3月29日払い込みで第3者割当増資を行い、2423億円を調達した。1997年の創業以来初めて大がかりな資本を受け入れ、自前主義を捨てたのだ。
そのうち1500億円を出資した日本郵政(増田寛也社長)は、8.32%を保有する第4位の大株主となる。
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source : 文藝春秋 2021年5月号