われわれの頭上に「墨子」がいて、情報世界の覇者として君臨している――その事実をどれだけのひとが知っているだろう。2016年8月、中国は量子科学衛星「墨子」を世界に先駆けて打ち上げた。最先端の量子暗号システムを備えて盗聴・傍受を封じ、軍事・金融分野での極秘通信を可能とした。まさしく「21世紀のスプートニク・ショック」だった。冷戦期に人工衛星の打ち上げでソ連に先んじられたアメリカは直ちに反転攻勢に出た。だが「トランプのアメリカ」は手を拱いて中国の独走を許したままだ。
宇宙法の第一人者、青木節子は、『中国が宇宙を支配する日』で、危機がいかに切迫しているか、個々の事象を読み解いて問題の核心を抉ってみせる。中国の攻勢は長期の戦略に基づくものであり、宇宙分野で中国の優位はわれわれの想定を上回ると断じている。安手の反中感情を排して、無類の正確さで驚くべき現況を活写してみせた。最初の論考が多言語で国際社会に発信される現場に立ち会った者のひとりとして、若い世代にぜひ読んでもらいたい。
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source : 文藝春秋 2021年5月号