ルクソール西岸「失われた黄金の町」

巻頭随筆

矢羽多 万奈美 エジプト考古学者
エンタメ 読書 歴史

 この4月、エジプト南部のルクソール西岸で、古代の町が発見された。ルクソールは古代都市テーベと言われ、「古代都市テーベとその墓地遺跡」として世界遺産に登録されている。発見された町の東にはアメンヘテプ3世の葬祭殿(メムノンの巨像)があり、北西には黄金のマスクで知られるツタンカーメン王が今も眠る「王家の谷」がある。

 発見したエジプト人考古学者チームの発表によると、この町が成立したのは約3500年前。日本でいえば縄文時代後期にあたる。エジプト史でみると、アメンヘテプ3世から始まり、ツタンカーメン(厳密に表記するとトゥト・アンク・アメン)、次の王アイの時代まで機能していたようだ。遺構から「アテンの輝ける町」と都市名の刻印された封泥(封印に用いられた粘土)が出土しているが、エジプト考古学の権威ザヒ・ハワス博士は、古代エジプト黄金時代の町ということで、「失われた黄金の町」と名付けた。ちなみにザヒ博士は、エジプトの遺跡はまだ30%ほどしか調査されていないと語っており、今後も墓や町が発見される可能性は大いにあるだろう。

 エジプトというと、黄金のマスクやミイラ、財宝などを想像する方も少なくないだろう。しかし、考古学は「宝探し」ではなく、遺跡・遺物の記録と修復保存、そして当時の人々の生活や文化などの研究だ。「アテンの町」が重要なのは、大量の大型土器類、装飾品、埋葬された人骨などの出土もさる事ながら、町の残存状態が良く、当時の生活情報の研究が可能になるからである。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2021年7月号

genre : エンタメ 読書 歴史