東京帝国大学在学中に文壇に登場した宮本顕治(1908~2007)は、警察の弾圧と戦った共産党の闘士として知られる。元参院議員の筆坂秀世氏がその素顔を明かす。
筆坂氏
戦前、警察のスパイを査問の末に殺した容疑で逮捕された宮本は、拷問にも黙秘を貫き、終戦まで12年間も口を割らなかった。日本共産党史上、別格のカリスマだ。死に際して保守派の中曽根康弘氏が「敵ながらあっぱれ」と評価したほどである。
資本主義国で21世紀まで共産党が残ったのは日本だけだ。これは「議会で多数派を握り革命を起こす」という、暴力革命を取らない路線を作り上げた宮本さんの功績と言っていい。書記長時代には、岡正芳や不破哲三といった理論派を取り込んで、党の根幹となる61年綱領を練り上げた。冷戦終結などを受け修正はされたが、基本は今も変わらない。
宮本顕治
私が国会議員秘書をしていた若い頃、宮本指導部からよく「『赤旗』の部数を増やせ」と命じられた。「党員というより新聞拡張員のようだな」とぼやいたものだ。政党助成金や企業献金に頼らずに済むのは、購読料収入のおかげだ。
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source : 文藝春秋 2022年1月号