女流作家の地位を確立し、5000円札でも知られる樋口一葉(1872~1896)。「にごりえ」や「たけくらべ」などを訳し、現代に甦らせた伊藤比呂美氏が読み解く。
樋口一葉。ものすごく読みにくいと思っていました。文語体でタイトルもわかりにくく、藤村の「破戒」や花袋の「蒲団」より前の自然主義や私小説より前の作り話の世界、一葉本人のことなんか関係ない。そう思っていたのに、読んでみたらとんでもなかった。
なんと、読めば読むほど、一葉自身を小説の中に見つけることができるのです。私は探偵みたいに一葉探しに没頭した結果、「にごりえ」のお力の中に一葉その人を見つけました。「たけくらべ」の美登利や信如や正太郎の中にも見つけました。
かれらが感じている不安や絶望、寂しさやいたたまれなさ、ここは自分の場所じゃないと感じる生きにくさ。古い文語の中で、ざらざらとした人の心の動きだけが、あまりにも生々しい。これは一葉本人が経験したに違いない心の動きだと確信したのでした。
樋口一葉
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source : 文藝春秋 2022年1月号