死への3ヶ月
「あなたの余命は、後3ヶ月くらいです」と、突然、目の前の医師に言われたらどう思うだろう。想像すらできないが、石原慎太郎氏はその言葉に直面した。思考は停止するだろう。その瞬間から、世界の見え方が変わるのだと想像する。
余命宣告を受けたあとの「死への道程」。普通の人には到底書けないだろうが、それを彼は書き上げた。
4月号には、石原慎太郎氏の遺稿『死への道程』が掲載された。さすが作家だと思った。
「『死』の予感とその肌触りは人間の信念や予感までを狂わせかねない」と書かれている。死の前の強い苦しみを軽減してくれ、とあるが、その気持ちはよくわかる気がする。「死はなんと憚る事なく奪うものだろうか」「出来得るものなれば私は私自身の死を私自身の手で慈しみながら死にたいものだ」。慎太郎氏が考えていた通りに最期を迎えられたことを祈りたい。
4男の延啓氏の文章で、慎太郎氏のそれまでの人生と生き方を知ることが出来る。それによれば、彼は自信家であったように思える。
当時、一橋大の学生という若さで芥川賞を受賞している。政治家でもあった。宗教や神に頼ることなく、自分が思ったことをどこまでも追求したのだろう。人生の一瞬一瞬を大事にして、自我を失うことを最後まで恐れた。
誰しも、自分は運が良かったし、幸せな人生だったという実感はなかなか持てない。だが父はそれを持てた、と延啓氏は言う。
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source : 文藝春秋 2022年5月号