若元春(福島市出身、荒汐部屋、28歳)
弟は大関候補。兄も目覚めるか
先の三月大阪場所、浪速の地で初賜杯を抱いた関脇若隆景は、荒汐部屋“大波三兄弟”の末っ子だ。長兄の若隆元は、ケガに苦しみながらも幕下で奮闘し、末っ子の付け人を務めている。土俵上で塩を取る弟と、花道奥で見守る長兄はアイコンタクトを取り、いざ勝負へ。兄弟の絆を垣間見せる光景だ。
そんな若隆景の次兄にあたるのが、若元春である。今年初場所前の新入幕会見では、「(約2年と)十両生活が長かったので幕内で通用するか自信がない」と、控えめに発言するも、9勝6敗の好成績を挙げた。入幕2場所目となる先場所は西前頭九枚目で、またも9勝6敗と勝ち越し、着実に力を付けている。「弟の若隆景だけでなく“お兄ちゃん”も期待大」と誰もが注目している存在なのだ。先場所は得意の左四つで、三役経験のあるベテラン隠岐の海を寄り切る、堂々とした相撲を見せてもいた。
2011年九州場所で初土俵を踏み、翌年初場所で序ノ口優勝。以来、たった1年で幕下昇進する順調な出世ぶりだったが、幕下の地位で足踏みすること約8年。雌伏の時を送り、今、つぼみが花開いた。部屋のマネージャーを務める元力士の内海光氏は言う。
「彼は温厚な性格で穏やかですけれど、さすがに弟の存在に刺激を受けていると思います。幕内の土俵に上がるまでに約10年かかり、今は28歳ですが『大器晩成型』ですね」
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source : 文藝春秋 2022年6月号