人間の苦しみを浄化する遍路の力
もともと信仰心のない著者が四国遍路に出ることにしたのは、薬物依存だった身体の調子をととのえ、テーマである同和地区の取材をしてまわろうという不信心な魂胆からだったという。みずからを恥さらしの人生、つまり〈遍路に出たと聞いた周囲の人が「やっぱり」と思うような人生〉を歩んできたという著者が、このテーマで本を執筆したのは必然だったのかもしれない。
辺土という聞き慣れない言葉は、遍路で生活する者、つまりは乞食のことをさすらしい。著者はいわば取材辺土となり、遍路に吸いよせられる小さな人間の物語を追いかける。ハンセン病者や犯罪者、無宿者に元ヤクザ。遍路に出るぐらいだから、登場するのは、あるいは差別され、あるいは社会のまっとうな路線からはみ出し、人生に苦しんできた者ばかりだ。周辺の路地の者が被害にあった、かつての悲惨な虐殺事件の話もある。それでも全体的に陰惨なトーンになっていないのは、人間味という温かさと適度な興味本位で統一されているからだろう。
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source : 文藝春秋 2022年7月号