国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。
【ふ】「フコイダン」の効果 国語辞典に書けるのか
これを食べれば健康になる、と言わんばかりの商品が、入れ替わり立ち替わり現れます。「乳酸菌が何億個も入っている!」と強調する食品のCMを見ましたが、それってすごいのか。菌は微小だから、何億個ぐらいは普通に集まっていそう。どれだけの個数を摂取したらどうなる、という説明もありません。
フコイダン、という食物繊維がもてはやされるようになったのは、21世紀に入ってからのことです。コンブやワカメなどのぬるぬるに含まれる成分です。2011年の新聞広告には〈フコイダンには自ら傷ついた部分を修復し、外敵などから身を守り、抵抗力を増幅させる機能があるのです〉と、なんだかすごそうなことが書いてあります。
あまりにもよく見聞きするので、私たちの『三省堂国語辞典』第7版(14年刊行)にも「フコイダン」を入れることになりました。ちなみに、私はそれまで「セメダイン」と同様「フコダイン」だと思っていた、というのは余談です。
さて、説明を書く段階で、はたと困りました。〈コンブ・ワカメなどのぬるぬるした部分にふくまれる成分〉なのはいいとして、それだけでは、ことさら新しく辞書に載せる理由が分かりません。かといって、「抵抗力を高めると話題になっている」などと、広告の文言をそのまま引き写すわけにもいきません。
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source : 文藝春秋 2022年7月号