悲願の憲法改正に向けて「急がば回れ」を選んだものの……
「初心に帰って謙虚に、誠実に、丁寧に全力を尽くして参ります。そう誓いました」
8月12日、山口県長門市。首相の安倍晋三は、妻の昭恵と共に亡父・晋太郎の墓を参ると、記者団の前でこう語った。2020年の東京五輪・パラリンピックを持ち出し、長期政権への意欲を隠そうともしなかった昨年の墓参から状況は一変していた。
「仕事人内閣」と銘打ち、3日に発足した第三次安倍第三次改造内閣。だが直後の各社の世論調査は、内閣支持率が数ポイント回復したものの、おおむね不支持が支持を上回ったまま。「首相が信頼できない」という不支持理由が圧倒的に多く、「反安倍」ムードは収まる気配がない。「こんなもんでしょう」。安倍は周囲にそう強がるが、表向き神妙にならざるを得ない。
当初、改造内閣のキャッチフレーズは「仕事師内閣」だったが、「仕事しない」と聞こえるため「仕事人」に変更した。だが早速、二階派から初入閣した沖縄北方担当相の江崎鉄磨が看板に泥を塗る。就任2日後に「お役所の原稿を読む」と語り、「やっぱり『仕事しない』閣だ」と、笑えないジョークが官邸内で飛び交った。
墓参の3日前、安倍は東京・富ケ谷の自宅で盟友、副総理兼財務相の麻生太郎と向かい合っていた。麻生が「これから何をなさりたいですか」と問いかけると、安倍は「憲法改正です」と言い切った。改造直後の記者会見で「(改憲は)スケジュールありきではない」と、秋の臨時国会に改憲原案を提出する方針を軌道修正したばかりだったが、行程表を後ろ倒しにしただけで、改憲への意欲は衰えていないのだ。
つまり、今回の改造の実相は「仕事人内閣」ではなく「安倍3選内閣」。安倍は改憲という悲願達成のため、「急がば回れを選んだ」(首相周辺)。手堅い布陣で経済や外交で成果を出し、支持率を回復させ、来秋の総裁選で3期目の任期を手にし、じっくり改憲に取り組む戦略に舵を切ったのだ。自民党内の改憲取りまとめ役である副総裁・高村正彦の入閣を、一時真剣に検討したことがその何よりの証左である。
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source : 文藝春秋 2017年10月号