「定年までの会社生活はリハーサルで定年後こそ本番」「若い時には注目されず、中高年になって不遇な会社人生を送った人でも、定年後が輝けば過去の人生の色彩は一変する」……取材と自身の実体験から、そう訴える『定年後』(中公新書)が20万部超のベストセラーとなっている。幸せな「定年後」を生きるのに必要なものは何か? 著者の楠木新さんが語る。
経済的に十分余裕のある定年退職者でも、何をしていいのかわからず戸惑っている人が実に多いようです。定年後に働かなくて済む余裕があるからこそ困っている。自分の心安らぐ居場所がないのです。
私は生命保険会社に勤めながら、50歳から大学院に通い、ペンネームで『人事部は見ている。』『左遷論』といった本を執筆し、約2年前に60歳で定年退職しました。
退職後、1カ月程度は解放感がありました。しかしその後、会社の拘束や仕事上の義務にいかに自分が支えられていたかを私自身も痛感するようになりました。
36年間の会社生活では、午前8時半には会社に出勤していましたが、「しなければならないこと」が急になくなると、曜日の感覚がなくなり、1日の区切りも失われてしまうのです。
もし自分が1日どう過ごしていいかわからず、朝から何もすることがなければどこに行くだろうか。そんなことを考えて、定年退職者と思しき人を探し求めて、半ば「探偵」のように街を歩き始めました。
居場所がない定年退職者
すぐに気づいたのは、住宅地で定年後の男性高齢者が居心地良く過ごせるような場所は、ほとんどないということです。
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source : 文藝春秋 2017年10月号