超異例のトヨタ相談役、日本郵政と官邸、みずほ改革の行方、失態は東芝だけじゃない

丸の内コンフィデンシャル

ビジネス 企業

★超異例の相談役

 国内自動車部品最大手・デンソー(有馬浩二社長)の小林耕士副会長が4月1日付で、トヨタ自動車(豊田章男社長)の相談役に兼任で就任した。しかしトヨタの相談役は、副社長以上の経験者が就くのが慣例。現在は社長・会長を務めた奥田碩氏らがその任にあるが、小林氏はトヨタでは部長止まりで役員すら経験していないため、超異例の人事なのだ。また内規上はデンソーの役員定年を迎えているが、これも特別扱いで留まっている。

 デンソーでの役割は東京支社統括だが、「本業に関する重要な仕事は殆どしておらず、トヨタの渉外・広報業務を支援することと、管理職の再教育が主な役割」(トヨタ社員)。豊田社長から役員・幹部人事の相談も受け、財界活動の代行もしている。

 こんなにも小林氏が優遇されているのは、「豊田社長が、財務部と国内営業に在籍していた時代の2回も上司を務め、公私にわたって面倒を見たことで兄のように慕われている」(トヨタ担当記者)から。その豊田社長への食い込みぶりから社内の一部では「トヨタのラスプーチン」とも呼ばれているという。

 権力は絶大だ。トヨタ系企業の幹部は「仕事でもたもたしていると、小林相談役から管理職にスマートフォン経由で指示やお叱りの連絡がくるので、みな戦々恐々。特にLINEでの連絡が既読になっていないと、さらに怒られるので、読んだふりをしている」と話す。メディアの役員や週刊誌編集長、国会議員とも積極的に付き合い、ロビイ活動にも熱心だという。

 だが「小林氏がしていることは、本来は現役の幹部や役員の仕事。これは豊田社長を支える人材の枯渇と能力の低下を象徴している」(前出記者)との指摘も。またある役員OBはこう話す。「トヨタでは最近、相談役制度を任期制に改め、これまでは死ぬまで相談役だったのを、一定の期間で退くことになった。秘書や車が付く相談役はコストもかかるし、老害経営の温床にもなりかねないので、大変いいことだと思った。しかし社長の側近をこういう形で起用することは、その趣旨に反しているのではないか」。

 小林氏の権勢はいつまで続くのだろうか。

★日本郵政と官邸

 日本郵政(長門正貢社長)が、野村不動産ホールディングス(HD、沓掛英二社長兼グループCEO)の買収に動いていることが明らかになった。これは早ければ7月にも行なわれる日本郵政株の2次売り出しに向け、株価を上げる必要があるためだ。「5月時点で同社株は1350円前後で推移しているが、2年前の1次売り出しの価格は1400円。追加売却を円滑に進めるために、政府も日本郵政もその水準まで回復させたい」(経済部記者)のである。4月に発表された、同社傘下の日本郵便(横山邦男社長)が買収した国際物流会社トール・ホールディングスに絡む4003億円の減損処理も同じ思惑の動きだ。

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source : 文藝春秋 2017年07月号

genre : ビジネス 企業